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いちご白書のYOU5521のレビュー・感想・評価

いちご白書(1970年製作の映画)
3.8
セックスの後のピロートーク中
膣部を触った手で胸を触らないでほしい
と言われたことがある。
思えば、手マンの前に
痛くしないようにと舌で指を湿らせていたのも
女性側からすれば不衛生で
NGだったかも知れない。
男女に限らず、他者との関係性は難しい。
無自覚だったり、良かれと思ってした行為が
相手を不快にしたり、傷つけたりする。
青春とはそんなことの繰り返しなんだと思う。

『いちご白書』といえば何と言っても
荒井由実の名曲『「いちご白書」をもう一度』だ。
何度も聴きたいし、口ずさみたい。
そんな本作、実は初めて観た。
新聞のテレビ欄、NHK・BSで放映を知り、機を得た。
ユーミンの歌詞にある
「悲しい場面では涙ぐんでた」
の「悲しい場面」とはどのあたりなのか、
興味があった。
「本作の実現はサンフランシスコと」
「ある匿名のロケ地のおかげである」
「他の都市は皆撮影を拒んだ」
冒頭流れるフレーズが、
「反骨」「学生運動」を予感させる。
オープニング曲は軽快で、
ドラマ『愛という名のもとに』に影響を与えたような
ボート部の練習シーンに
『セント・エルモス・ファイアー』のような
青春のきらめきを覚える。
(エンディングにも同じ曲が流れる)
想像では勝手にジーン・ハックマンのような
強そうな男をイメージしていたが、
柔和な表情の若者が主人公だった
(体は逆三角形で締まってる)。
「就職が決まって、髪を切ってきた時、
『もう若くないさ』と君に言い訳したね」
考えてみればユーミンの曲の彼も
そんなやさ男をイメージさせる。
「革命は、もう目の前」
声高に団結と革命を標榜する若者たち。
ふと、現在の日本を思った。
失われた10年、20年とか言われ、
世界的にもあまり希望が見えない現在、
世相を反映してか、若者の表情に明るさは少ない。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
アメリカン・ニューシネマらしい
実験的な手法、ストライキの夜は不思議と
ロマンチックだ。
リンダのあの童顔で超ミニは反則だろう。

機動隊の突入シーンでは
「真実 自由 寛容」の大学憲章が
大写しになる。
期せずして、今朝の新聞に
香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)の
「事実上の亡命宣言」の記事があった。
ロシアのウクライナ侵攻、ガザ、中国、
ミャンマー、戦争や紛争の続く現在、
本作を取り上げる意義は大きい。
放映したNHKに敬意を表したい。
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