ゲイリーゲイリー

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

3.0
愛する人を失った時に訪れる痛みや悲しみは、計り知れない。
そしてその痛みや悲しみに向き合う方法は、人それぞれである。
そのため、悲しみに向き合う方法が異なる他者に苛立ちを覚える気持ちも分からなくはない。

ましてや、本作の主人公オスカーは幼い子供で尚且つアスペルガー症候群でもある。
そんな子供が抱いた悲しみの大きさを考えると、あまりにも遣る瀬無い。

ただ、オスカーに見習うべき部分もある。
悲しみに暮れて何もしないのではなく、亡き父親との約束を果たすためにオスカーは行動することを厭わない。
苦手な人付き合いも果敢にこなしていく行動力や、子供ならではの素直さに心打たれた。

そして本作の素晴らしい点は、オスカーだけにとどまらず、周りの人達も悲しみを抱えているという描写だ。
人々が抱える悲しみをこれ見よがしに描くのではなく、日々の暮らしの中に垣間見える程度に描いていたのがとてもリアルだった。

誰しもが悲しみを抱えながらも日々を笑顔で過ごそうとしている。
自らも悲しみを抱きながらも、オスカーの助けになろうとする人々。と同時に、オスカーに救われる人々。
優しさや愛の素晴らしさを再認識させられる作品だった。