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冬の小鳥の一のレビュー・感想・評価

冬の小鳥(2009年製作の映画)
4.1
あぁ そういやキム・セロンって天才だったんだ…

父親に捨てられた事実を受け入れられない9歳の少女の、悲しくも切ない失意の日々と、そこからの再生を描く

韓国から養子としてフランスへ渡った監督自らの少女時代を映画化した自伝的作品

恐るべきキム・セロンの映画初出演作
『アジョシ』以上にキム・セロンの天才っぷりが遺憾なく発揮され、少ないセリフの中でも少女の繊細な心の葛藤を、表情や眼差しのみで完璧なまでに表現しています

イ・チャンドン監督が脚本を気に入り、プロデューサーとして携わったということで、彼の演出にかなり影響を受けているのを感じ取れます
結果、監督デビュー作にしてこれほど重厚な作品に仕上がったのかもしれません

静かに少女の目線で物語はゆったりと進む
セリフではなく映像や間で語りかけ、音楽にも一切頼らない

父親に捨てられ孤児院に入れられてしまった9歳の少女
あまりにも苦しい状況に置かれ、受け入れきれずに反発するも、それすらも不思議なほどに淡々と映し出される

孤児院にいる他の少女も含め、背景にある事情は一切語られない
なぜ父親が置いていったのかもわからない
たがらこそ観客は少女の気持ちを映像から汲み取るしかない

幼いながらも徐々に自分の境遇を受け入れ始め、現実に向き合おうとする少女は、大人よりよっぽど逞しく見えた
丈直しで歌う歌、お別れで歌われる歌
どちらも胸にめちゃくちゃ沁みる…

キム・セロンは映画初出演でこれほど自然な演技ができるのはちょっと異常
演技を超越した何かがあるとしか思えなくらい凄すぎる…
『アジョシ』の大成功は、本作の経験があってこそと言っても過言ではないと思います

ほとんどは背中、顔が見えるのは一瞬ですが、父親役はまさかのソル・ギョングでした😨

ただただキム・セロンに心が鷲づかみにされてしまった一本
派手さはないけどずっしりと胸に残る傑作
90分ちょっとなので、静謐な作品が苦手な方でも観やすいと思いますのでぜひ

またしてもイ・チャンドン監督が関わる作品はハズレないと証明されてしまった…👏🏻

[Rotten Tomatoes 🍅-% 🍿88%]
[IMDb 7.5 / Metascore - / Letterboxd 3.7]

2020 自宅鑑賞 No.371 GEO
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