優しいアロエ

隠し砦の三悪人の優しいアロエのレビュー・感想・評価

隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)
3.8
ここまでに観た黒澤明の作品のなかでも最も娯楽に振り切っている。姫を国へ返すために一人の侍と二人の農民が奮闘するロードムービーだ。

農民の太平・又七コンビがC-3POとR2-D2のモデルになったことが今では語り草だが、云われてみるとその貴種流離譚ベースな物語もどことなく『スターウォーズ』に似ており、あの姫様はレイアにもルークにも見えてくる。(ただ、一番イメージが近かったのは『村上海賊の娘』という小説)

面白いのは、「敗者は死ぬべきだ」「死んでこそ本望」というような本来の武士のあり方の逆をゆくところだ。むしろ生き延びてこそ己の真価が問われるのだと説いている。現代ではもちろん死を尊ぶような風習はないが、それでも映画や漫画になれば「死ぬこと=カッコいい」とされている節はあるので少々驚いた。

ただ、思えばあの『七人の侍』でも、戦争で死ぬことがいかに無意味であるかを説いていたわけだし、『影武者』『乱』と反戦的な作風は後期まで徹底している。時代劇の旗手・黒澤は、戦争や名誉で人が死ぬことに対し、誰よりも疑問を抱いていたのかもしれない。
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