踊る猫

フィッシャー・キングの踊る猫のレビュー・感想・評価

フィッシャー・キング(1991年製作の映画)
3.7
テリー・ギリアムという人は不思議な監督だ。掴みどころがない、というかエゴがない人のようでありながら実は監督としての「クセ」を作品に残してしまうところがあるようで、しかしその「クセ」がなんなのかが言葉にしづらい。敢えて言えばパラノイアというか強迫観念を持った人に惹かれて、そういう人が持つ独自のプレッシャー/切迫感を作品にするのが好きというところがあるのではないかと思う。この映画でも、一見するとハートウォーミングな話のようであるけれど実はトラウマを持つホームレスの男のそのトラウマを描写する際、奇妙に監督の腕が冴えているように感じられる。だから私たちは彼の悪夢を自分のことのように体感することができる。『未来世紀ブラジル』から『ゼロの未来』まで似たような「悪夢」を魅せてくれる監督だったが、それはこの映画の中にも現れている……同じ監督が撮ったのだから当たり前だ、と言われるかもしれないがなかなかこういうことに気づかされると嬉しくなるというもの。大人のおとぎ話、とはこういう映画のことを言うのだろう。
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