真鍋新一

新網走番外地の真鍋新一のレビュー・感想・評価

新網走番外地(1968年製作の映画)
3.6
健さんだけでなく、メインスタッフもほぼ全とっかえで再スタートした網走番外地。今回の網走はまさかの進駐軍の刑務所で、健さん以外の囚人はほぼ白人様のこれ以上ないアウェイな環境での生活を強いられる。その一方で、これまでのシリーズではろくでなししかいなかった監守が逆に今回はメチャクチャ人道的だったりしてホロリとさせられる(ジェリー伊藤、やさしい)。

しかも今回の健さんは復員してきたばかりでヤクザ者ですらなく、仁義を切ることもできない。完全にエピソード0の心意気で作られている。さらにこのころには五社協定が崩れかけていて、日活、東宝、大映からの人材が出演。健さん、長門裕之、山本麟一(今回は味方!)の3バカ大将も割と早い段階で違和感がなくなる。健さんはドカベンの岩鬼みたいにずっとマッチ棒を口に加えてたんだがあれはなんなんだ。

見ていくとわかるのだが、今回は健さんがアメリカからやってきた戦後民主主義の概念を知る、という裏テーマがあり、終戦直後を描いた映画として、単品で楽しむこともできるようになっている。

健さんがかつて結婚を誓った松尾嘉代と、彼女を密かに慕っている三橋達也という三角関係や、在日中国人でありながら日本の娘に恋をしてしまった今井健二のエピソードなど、話がまさかのメロドラマ化。こうなるとマキノ雅弘監督の古典的かつ繊細な演出は圧倒的に強い。

監督次第でどうにでもなってしまう網走番外地、これから一体どこへ向かって行くのだろう…?
真鍋新一

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