フラハティ

ザ・ビーチのフラハティのレビュー・感想・評価

ザ・ビーチ(2000年製作の映画)
2.9
快楽を追求せよ。


バックパッカーが一人旅をしている。
「この世の楽園を知ってるか?」
男から渡された地図は、誰も知らない幻の楽園だった。


作られた世界の、作られた楽園。
内側から崩壊していく楽園。
広大なビーチ。
美しい砂浜。
自給自足の生活。
まさに理想的な楽園。
しかし、文明社会がなければ結局人間は生存することはできない。

本作の美しき孤島は、田舎の集落とあまり変わることはない。
人工物で覆われた世界で生活している現代人には、心の安らぎが必要であり、求められるのは自然豊かな楽園。
本当の中身を知る頃には、楽園とは現代人の心が作り出したオアシスで、理想のようなものが実際に叶うとは限らないということがわかってくる。
希薄な人間関係。
退屈な娯楽。


幻と言われた島にたどり着いたときのホラー感は最高にワクワクするんだけど、その後の展開は人間のコミュニティについての話へ。
ダニー・ボイルの音楽センスは毎回感心するし、テンポのいい編集と青春の突っ走りの描きも上手い。
だけど、本作だと人物描写の深みが足りないかな。
楽園での浅い人間関係という意味ではある意味正解なんだけど、せめてあの三人はもうちょっと描写を深掘りしてもよかったと思う。

『トレインスポッティング』のような、今いる場所に対する不安や変わらない現状の逃避、というのは共通したテーマ。
結局忘れられないし、抜け出せないんだ、クソだろ?っていうところは面白い。
レオ様の後半のトリップは俳優としての凄みだね。
アイドル俳優として売れてしまうと、それはそれで難しいね。
そういう意味では、この映画は結構大事なのかも。


ありきたりの文明社会などくそ食らえ。
どこの観光地へ行っても、多くの観光客がいる。
一人旅をするならば、安全な場所よりも一歩進んだ危険な場所のほうが心踊る。
若者の猪突猛進な性格から、良き思い出のように感じるラストはさすがのセンス。
ほんとうの楽園とは一体どこ。
そんなものは存在しなくて、人間が集団で生活するには何かしら闇があるんだろうね。
今の現実だってそうかもしれないし、天国はクソみたいな現実からの逃避の創造物なのかもしれない。
それでも人間は楽園を探し続ける。

本作に限っては、フランス人のジョークのセンスはよくわからん。
フラハティ

フラハティ