えびちゃん

一瞬の夢のえびちゃんのレビュー・感想・評価

一瞬の夢(1997年製作の映画)
3.7
微睡みながらみた一瞬の夢(寝ました)。
一緒に悪いことをしていた仲間は、さっさと足を洗い事業を成功をさせ結婚もした。兄は真面目に生き公務員になり裕福な嫁さんをもらった。自分はいつまでたってもだらだら生き、スリ稼業をやめられない。やめる気もない。だらしなく落ち着きのない所作、サイズの合っていないジャケット、顔からずり落ちてきそうなメガネ。けたたましく音の鳴るライター。しみったれた人物を語るにあまりある数々のだらしない描写にウッとなる…。
染みついた鬱々とした生活をキラキラした世界に変えてくれたカラオケパブのお姉ちゃんとの"一瞬の夢"。その夢はたばこの煙のように儚く消えていった。いつだって不満顔のウーがイキイキ、ウキウキしてポケベルチェックしていたのにね。現実はつらく厳しい。晒し者にされてもきっとウーは改心しないだろうしそれ以前に反省しないだろう。絶望を携えながらこれからもだらだら生きていく、そうすることでしか生きられないだろう。
シークエンスの切り替えでのブラックアウト、質感、カメラの回し方など胸にグッとくるものがあった。電子音の「エリーゼのために」、テレビから流れる本物の「エリーゼのために」の使い方は空虚さが滲み出てくるようでとても良かった。うーん、わたしの表現力の限界を感じているところだが本当にとっっても良い作品だった。
同じ中国語圏のエドワード・ヤンやホウ・シャオシェンは全体的に洗練された小綺麗な印象だけど、本作はいかにも大陸系な良い意味での大雑把な印象をもった。ジャ・ジャンクー監督デビュー作、1番いいところで一瞬の夢を見ましたが、とても良かった。
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