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約束のmaverickのレビュー・感想・評価

約束(2006年製作の映画)
4.5
2006年の韓国映画。主演は『ハイヒールの男』『がんばれ!チョルス』のチャ・スンウォンと、『台風太陽~君がいた夏~』のチョ・イジン。


これぞ韓国映画の王道と言える内容。純愛、悲恋、南北問題と、王道たるテーマで成り立っている。そして作品の完成度は素晴らしく、号泣ものの感動作。韓国ノワールやゾンビもの、胸糞展開や社会格差などが近年の韓国映画の主流ではあるが、初期の韓国映画の傑作といえばこういう作品が代表格だった。古き良き、そんな美しい韓国映画の雰囲気がたまらない。

主人公がチャ・スンウォンで、若々しく純朴な姿が微笑ましい。ノワール映画に欠かせない俳優としての地位を得た彼も、この頃はなんと初々しいことか。ある意味衝撃的でもある。何でもこなせるカメレオン俳優だけに、この時も純朴な青年を役作りで演じているだけでは?と疑いたくなる。

ヒロインを演じるチョ・イジンの可愛らしさが強く印象に残る。北の女性らしく強気な性格のヒロインだが、純な部分とのギャップがたまらなく愛おしい。好きな男性とは手をつないだこともないのだろうなと思わせる古風な女性。キスをする時の緊張感がこっちにまで伝わってくる。初見の女優さんだったが、演技は上手いしとっても可愛らしい。この作品以降でほとんど目立った活躍をしていないのが残念でならない。引退はしていないようだが、舞台とかに立っているのだろうか。

主人公もヒロインも、とにかく純粋。男は不器用で情けない部分もあるのだが、こんな人に愛されたら一生大事にしてもらえそうという優しい人柄に溢れている。女は強気だが、きちんと男性を立てる健気な性格。相手をずっと一途に思い続ける純愛さはどちらも同じだ。

北と南の分断が生んだ悲劇の物語。冒頭の別れのシーンですでに号泣だった。中盤を経ての後半での再会も泣ける。こんな風に人生を狂わされた人がたくさんいるんだろうなと考えるとやるせない。

重たいテーマでめちゃめちゃ泣けるけれども、人情を感じさせる温かい話でもある。コミカルさもあり、チャ・スンウォンのキャラクターが笑いも生み出す。全体的なバランスが優れているのも素晴らしい。

北朝鮮の酷い部分を感じさせつつも、だからといって韓国が綺麗に描かれすぎているという印象も受けない。北には北の良い部分がある。南にも良くない部分がたくさんある。その中で純粋に生きている人を映し出した作品性。国同士の対立とかそんなこと関係ない。純粋にただ人生を必死に生きている人には何の罪もないじゃないか。それを考えると本当にやるせない。


朝鮮の分断をテーマにした純愛ラブストーリー。『愛の不時着』の遥か前にもこんな名作は存在していたわけだ。人生は少しの違いで大きく変化する。分断を抜きにしても、人生のすれ違いを感じさせるドラマとして感慨深い。人の数ほどこうしたドラマはあるとも言えるな。
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