野

菊次郎の夏の野のレビュー・感想・評価

菊次郎の夏(1999年製作の映画)
3.5
温かい気持ちになれるヒューマンドラマという印象を受けた。
ソナチネ、HANABI、キッズリターンを観た後に菊次郎の夏を鑑賞したので、無常観と人情のギャップで初めのうちは慣れなかった。
何故、ソナチネのような、HANABIのような無常観が何故これほどまでに無くなったのか。何故、ある種大衆的とも見て取れるようなヒューマンドラマに仕立て上げたのか。
無常観が極まり、無常であること自体に疲れて、俗に言う普通に戻った。
その人生二周目のような、普通、これが菊次郎の夏のヒューマンドラマをグッと深める。という風に感じた。
相対的でない映画のレビューをすると、初めのうちはどこにでもあるような台詞の多い、要素の多い、人間的なヒューマンドラマであった。しかし、後半になるにつれ、おじさんを筆頭にプリミティブになっていった。従来の北野作品の如くミニマルになり、それが心象的な作用をもたらすという風になっていった。しかし、そのミニマルにも従来の無常観はなく静かな人間の温かさのようなものを感じさせるものであった。
時折挟まれる夢、それをシュルレアリスムに仕立て上げ、子供の深層心理を暴露することで子供の気持ちの方向性を説明する効果があったと思う。
菊次郎はいかにも暴力的であるのに銃も出てこず、人殺しも起きない。静かに人を普通に殺す従来の北野作品とは真逆である。
やはり、無常に無常を感じた故の無常へのアンチテーゼとしての菊次郎の夏なのだろう。
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