恩田陸原作の蜜蜂と遠雷
この映画のレビューを書くにあたり、原作について触れておかなければならない。
蜜蜂と遠雷は原作のジャケットに惹かれて手にしたのを覚えている。
あんなにに分厚い本は読んだことがなく、短編小説ですら読めない僕が、初めて読み通せた長編小説である。
なぜ読み通せたのか、それは、音のレトリック、ポエミーで刹那的な情景、が美しかったからである。
音が美しいのだ、鳴っていないのに聴こえてくる、音に込められた意思が。
それを軸としてレビューする。
まず、映像美。
ドラマチックな光と影のコンサートホールの美しさ。と、ポエミーな微睡んでいるような爽やかな空気感。が交互する。美しい。あと、女優が美人。
ストーリー。
先ほど書いた、微睡んでいるような爽やかな空気感【世界】に影響を受けてそれをピアノに再現しようとする。なんという世界に対する感受性だろうか。風間塵が【世界】となり、ギフトとなり、他のコンテスタントに影響【世界】を与える。そして、成長していくというストーリー。風間塵の天才性がいい。
その他。
僕はピアノは分からない。だけど、感動はする。風間塵との月の光の連弾は良かった。月の光の照らされたピアノの前でドビュッシーを弾くという、美しすぎる情景。それもある程度表現されていたと思う。本選のえいでんあや〔漢字忘れた〕の演奏曲も好きだ。粒立つ音繊細。綺麗。流麗。などの言葉が似合う演奏。実際、誰が演奏しているのだろう。
言うことがあるのならば、もうちょっと演奏にフォーカスを当ててもいいのではと感じた。原作での心理描写がもっと象徴的に伝わるようになっていればさらに良かった、この作品の味噌のようなものだから。
この作品を観ながら、原作を僕の中で再読していた。印象的なフレーズを思い出しながら、映像美に浸っていた。いい映画体験だった。