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深夜の告白のtjZeroのレビュー・感想・評価

深夜の告白(1944年製作の映画)
4.6
保険外交員のウォルター(フレッド・マクマレイ)は、勧誘先の人妻フィリス(バーバラ・スタンウィック)に魅了されてしまう。
彼女の夫を列車事故に見せかけて殺害し、倍額の保険金(=原題)を狙うふたりだったのだが…。

ウォルターは、フィリスの足首を飾るアンクレットに絡めとられるかのように、犯罪にのめり込んでいく。

邦題通り、犯行後の彼の告白によって物語られていく展開。
犯行をふり返ると、所々に”あの時点で思いとどまれば…”っていう運命の分岐点が効果的に配置されている。
それらを、極めて正確な時刻表のように、精緻に演出するドイツ出身のビリー・ワイルダー監督の腕の冴え。

ワイルダーと共同で脚本を書いている、ハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーの尽力も大きい。
ウォルターの独白による美文調のナレーションは、まさに彼の小説のように深みがあって滑らか。
セリフも含みがあって、魅惑的なものが多い。
特に印象に残るのが「殺人の共犯は、途中下車できない電車のようなもの」という言葉。
本作の7年後に作られた、同じくチャンドラー脚本の『見知らぬ乗客』(アルフレッド・ヒッチコック監督)に直通でつながるような、映画史に残る名セリフだと思う。
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