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アヒルと鴨のコインロッカーのryacのレビュー・感想・評価

4.0
濱田岳のナヨナヨっとした口調や立ち振る舞い、瑛太のどこか違和感のあるしゃべり方(これはのちの展開の伏線)、関めぐみの胸に一物抱えてそうな表情や台詞など、役者陣の演技がとにかく光る。

最初は「いくらなんでもストーリーが原作そのまますぎじゃない?」とか、「過去を表す表現として画面を白黒にするのってベタすぎない?」とか侮っていたものの、淡々としていながらも次第に物語の真実を明らかにしていく上品な展開に、最後には心底幸せな気分になっていた。
都会的すぎず閉鎖的すぎない絶妙な仙台のロケーションやブータン人のドルジが日本語を学んでいくプロセス、そしてボブ・ディランの『風に吹かれて』。作中に登場するあらゆる要素が愛おしく、切ない。

偏見や異文化コミュニケーションの難しさを描きつつ、ミステリやヒューマンドラマとしての面白さを打ち出していた原作のエッセンスを忠実に表現しつつ、映像表現としてブラッシュアップした、序盤に感じた違和感を伏線としてクールに回収していくシナリオの見せ方は原作以上。仙台に行きたくなるしディランを聞きたくなる、幸福な映画体験を得られました。
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