しぇんみん

キャリーのしぇんみんのレビュー・感想・評価

キャリー(1976年製作の映画)
3.9
戦慄と狂乱のプロムナイト。

ベイツ高校に通う女子高生キャリー・ホワイト。

彼女は狂信的なキリスト教徒である母から高圧的な教育を受け、更に地味な容姿と気弱な性格からクラスメイトたちに虐めを受けていた。

ある体育の授業後、シャワー中に彼女は遅めの初潮を迎える。
(そしてこの日以来、キャリーの周辺には不可思議な現象が頻発するようになる)

月経について何の知識もなかった彼女はパニックを起こし、クラスメイトから揶揄われてしまう。

体育教師コリンズにより騒ぎは収まるが、キャリーを揶揄った少女たちは重い罰を受けることとなった。

渋々従う彼女たちだが、その一人であるクリスは納得が行かない。

一方、別の一人スーは、罪滅ぼしとしてボーイフレンドのトミーにキャリーをプロムに誘うよう依頼する。

責め立て罵る母に初めて背き、戸惑い恐れながらも遂にトミーの誘いを受けることにしたキャリー。

そしてプロムの夜の惨劇を迎えることとなる...。

原作はスティーヴン・キングが1974年に発表した初の長編小説『キャリー』であり、彼の初の映画化作品だ。

監督はブライアン・デ・パルマ、淡い映像とスローモーション、画面分割同時進行など独特なカメラワークが印象的。

主人公キャリーを演じるシシー・スペイセクは、線の細い美しさと心の奥の孤独と危うさを醸し出す。

狂気の母マーガレットを演じるパイパー・ローリーの吹っ切った存在感も凄まじい。

ホワイト家の二人の女性の演技は、本当に素晴らしい。

そして、何と言っても本作の見どころは、戦慄と狂乱のプロムナイトの惨劇だ。

ステージ上で幸せの絶頂から地獄へと叩き落されるキャリー。

真紅に汚れた彼女の心は壊れ、怒りと悲しみの爆発により暴走するサイコキネシスは、破壊と殺戮を始める。

一言も発さず、ほぼ動かず、目と顔の向きだけで暴虐の限りを尽くすキャリーの存在感は圧倒的。

映像的に齟齬があったりチープに見える部分はあるものの、まさに「惨劇」としか呼びようのない描写は圧巻だ。

(原作ではより広範囲の破壊が行なわれ、町全体が復興不可能にまでなる)

そしてラストの「あのシーン」は初見では心臓に来る。

古典的ホラー作品に大満足であった。

ハナマル!

2019/08/28
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