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チャップリンの殺人狂時代のtjZeroのレビュー・感想・評価

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)
3.5
保険金詐欺&重婚&殺人をくり返す犯罪者を描く…。

善良なヒューマニストの役柄ばかりだったチャールズ・チャップリンにしては、異色な主人公。

長年にわたって強固なキャラクターを作り上げてきたアーティストも、自らそのアイコン(偶像)をぶち壊したくなってしまうものなのだろうか。
優等生イメージをふり捨てて”BAD”を歌うマイケル・ジャクソンのように…。

主人公のアンリが道を踏み外すきっかけが、
☆戦争や恐慌で財産を失ったこと☆

この☆~☆の部分は、それまでのチャップリン映画でもよく見られた設定だった。
それまで、というか大半の彼の作品では、☆~☆の後も、
① 主人公は善良な心を失わず、貧しくも正しい道を歩み続けた。
この作品が異色なのは、☆~☆の後で、
② 妻子を養うためとはいえ、悪事に身を染め、大金を手にしてしまうこと。

①&②を同じチャップリンが演じることで、ニンゲンはちょっとしたきっかけとか歴史のいたずらで、まったく違う運命をたどってしまうことがあり得る…という深い味わいと余韻を残す。

殺人のシーンをはっきりと描いていない…という煮え切らなさはあるけれども、晩年に至ってもこんな意欲的な作品を作り上げたチャップリンの姿勢には敬意を表したくなる。
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