真鍋新一

裏切りの暗黒街の真鍋新一のレビュー・感想・評価

裏切りの暗黒街(1968年製作の映画)
3.0
鶴田浩二が東宝時代に戻ったかのような汗知らずのイケメンぶりで良い。例によって(と書かなければいけないのがつらいが)、黒人差別に苦しむケン・サンダースに「人間は誰だってつらいもんなんだ」と諭すが、この良くも悪くもフラットな優しさが昭和だ。

昭和の日本映画におけるケン・サンダースの描かれ方を振り返ってみると、日本人の監督たちが映画の中に出てくる黒人と、黒人という存在そのものをどう考えていたのかが見えてくるかもしれない。降旗康男監督も、ケン・サンダースを使うことでテーマ的にもビジュアル的にも洋画のテイストを日本で表現できる可能性を模索していたように思える。

ロケ地は主に渋谷周辺で、西武の建物だけ変わらないので宮下公園周辺だとわかる。八木正生のアシッドジャズっぽいBGMがよかった。戸川昌子の歌唱シーン、Apple立ち上げ時のサイケなビートルズのポートレートが貼られたバーの内装など、1968年の雰囲気だけでもそこそこ楽しめる。待田京介がシャブ中の禁断症状に襲われる時の照明の効果もちょっと面白い。

ただ、クールなクライムものを日本でやるときにどうしても東映の客層を考えてウェットな演出を持ち込んでしまうのは妥協できるにしても、事件の鍵を握る書類的なものが最後まで謎のままだったりする雑さはちょっとよろしくなかった。
真鍋新一

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