あなぐらむ

俺は待ってるぜのあなぐらむのレビュー・感想・評価

俺は待ってるぜ(1957年製作の映画)
4.1
多くの現代和製ハードボイルド作家に影響を与えただろう、石原裕次郎のメロウなアクションドラマ。

兄・慎太郎書下ろしの脚本を、藏原惟縒がジャズの香りとシャープなモノクロ映像で彩り、港ヨコハマをハリウッド映画色に変えていく(モノクロだけどね)北原三枝の影ある美が素晴らしい。

裕次郎が待つのは女…ではなく兄からの手紙。過剰防衛の罪に苛まれる男、歌えなくなり棄てられた歌手の女。孤独な魂が波止場のレストランでつかの間、触れ合う。男女どちらもストイックである為、ぎりぎりの処でメロドラマを回避し、活劇へと帰り着く。悪党・二谷英明はおいしい役どころ。

チーフ助監督・松尾昭典は後年監督デビューし裕次郎+ルリ子で「夕陽の丘」を撮るが、これは「俺は待ってるぜ」の準リメイクのような一作。デュエットも聞かせる二人のロマンティックなドラマが楽しめる。「銀座の恋の物語」の変奏とも言え、藏原を追いかける姿勢が見える。

しかし不思議なのは慎太郎って長男なのに、どうしてこんな次男の気持ちがわかるんだろうっていう。「狂った果実」も弟の話、「俺は待ってるぜ」も弟の話。心理学科だったっていうし、すごい弟=裕次郎に憧れがあったんじゃないか?