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ルワンダの涙のバナバナのレビュー・感想・評価

ルワンダの涙(2005年製作の映画)
5.0
富裕層や中間層のルワンダ人が出てきた『ホテル・ルワンダ』と違い、海外青年協力隊でヨーロッパから現地の学校に教えに来た青年と、30年来この地に赴任している神父の目を通して、大部分の普通のツチ族がどの様な運命を辿ったのかを見せています。

冒頭から、子供同士の間でも、ツチ族の子供はフツ族から石を投げられたり、「ゴキブリ!」と罵られたり、
日常的にフツ族によるツチ族への差別がある事を見せ付けられます。

そして、この作品はイギリスBBC放送の制作なので、
『ホテル・ルワンダ』ではよく分からなかった大虐殺のきっかけも、作中に於いて、フツ族の政治家が同族である大統領を暗殺し、その濡れ衣をツチ族に着せることで大量虐殺を始めた事を、はっきりと明示しています。

現地に駐在する国連平和維持軍であるベルギー部隊は、たくさんのツチ族が助けを求めて逃げてきたにも係らず、
「自分たちは、ただ監視に来ているだけ。国連安保理事会で承認されない限り反撃は出来ない。武器は自衛にしか使用できない」と言うばかり。

BBCの記者までもが、「去年居たセルビア・ヘルツェゴビナとは違う。去年は現地の人と自分の母親を重ね合わせて泣いたけど、ここではアフリカ人が倒れているだけ。所詮他人事なのよ」と完全に諦めています。

そして青年も、ついに最後の決断を下す時がきます。
しかし、誰が彼を責められるでしょうか。
彼らが居た所からだって国際電話が繋がれば、救けを求めて掛けられるところに電話を掛けまくったでしょうが、普通の電話さへ繋がらない。
国内の教会に逃げ込んだ他の人々や、神父までもが殺されている様な状況なのですから。

とうとう「白人だけだ!」と見捨てられるツチ族が、
ベルギー軍に「我々を射殺してくれ」と頼みます。
もしベルギー軍が武器を残していったなら、彼らは迷わず、家族を愛するが故に、戦時下の沖縄の慶良間諸島の人々が採ったのと同じ行動を、ここでも犯した事でしょう。
少しでも子供を逃がそうとする、親の決断に泣きました。

ここまでの事が起こってしまうと、誰が彼の事を責められるでしょうか。
しかし、彼の採った行動は、彼が心ある人間であればある程、一生彼を苦しめる事になるのでしょう。
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