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好男好女のmingoのレビュー・感想・評価

好男好女(1995年製作の映画)
3.8
先日東京フィルメックスで本物の侯孝賢をみたのだが、なんつー愛らしいお爺ちゃんだったことか。そんな本作は非情城市、戯夢人生に続く台湾現代史三部作のラスト作品。過去、現在、劇中劇と目まぐるしく変化する構成の中にいつの日も変わらないグッボーイ、グッガールたちを描く。構造的にはかなり難解。

先日観た戯夢人生もそうだが、台湾の歴史を知ると知らないでは観方も感じ方も違う作品。評価は微妙らしいが侯孝賢がさらなる飛躍をみせた作品でもあるように思う。

長回しも多く使用され、一見すると退屈に見えるカットであっても、厳格さと愛に対する思いを痛切に感じ取ることが出来る。過去、現在、劇中劇、時代背景は違えども、愛への情熱というものは変わらない。ミレニアムマンボでみせた時代変化の初期衝動のチャレンジが垣間見える。

毎日かかってくる無言電話の、誰かも分からない受話器の向こうの相手に、亡き者のへ想いが溢れ出して泣きながら語りかけるシーンや、ラストのモノクロ劇中劇で処刑された夫を一人で泣き崩れながら供養するシーンの素晴らしさ。今までの懐かしさと素朴な純真さから少し離れ、厳格で重厚さを感じさせながらも、かつ誠実な眼差しの画面作り、成熟さを増していく侯孝賢中期作品。グッボーイグッガール。侯孝賢を追うものとしては観る価値しかない一本。
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