ろ

アンダーグラウンドのろのレビュー・感想・評価

アンダーグラウンド(1995年製作の映画)
4.2

月は真昼に照り、太陽は真夜中に輝く
真昼の暗黒を誰も知らない
太陽の輝きを誰も知らない

爆笑問題の太田さんオススメの一本。
クストリッツァ監督作、初鑑賞です♪

「博士の異常な愛情」や、テリーギリアムの映画みたいなテンションで展開していく、この訳分かんない感じがすごく好き。ただただボーっと観ていました。
でも終わってみると、やっぱり考えさせられるところがある。
あのカットは、ここに繋がっていたんだ、とかね。
そういう気付きが多かったなァ。

3つの大きな戦争と3つの大きな世界。
とにかく無邪気で残酷で、動物たちのつぶらな瞳が切ない。

地上では戦争。血が流れ、建物がボコボコ崩れ落ちる。
冒頭、動物園がめちゃくちゃになるんだけど、死にかけのチンパンジーとか、アヒルとトラが寄り添っている姿とか、本当に悲しくなりました。

地下では人々がひっそり暮らす。
そこで生まれ育った男女が結婚式を挙げる。
花嫁さんがね、すごく綺麗なの。天使みたいに飛んでくる。
でもね、花婿さんが水玉ハゲなの。
幸せそうだけど、ちょっと滑稽で可哀想。
ウェディングケーキとともに、ブラスバンドがグルグル回ります。

無邪気に飲んだり食べたり踊ったり。
そんなとき、戦車にチンパンジーが入って、ドカン。
無知な人間が武器を作って、自らの生活を壊してしまう。
ほとんどの人は危機感を持たず暮らしていて、気付いた人も見て見ぬふりをしちゃう。
そのことへの皮肉がスゴイ。

一番印象に残ったのは、
白い十字架の周りを火だるまになった車椅子がくるくる回る場面。
燃やされたのは夫婦なんだけど、二人は地下の人々を養っていた。同時に彼らを利用して、武器製造を行っていたのね。
そんな二人はキリストにはとてもなれなかったし、愚かだったの。
それを横目に白い馬がトトトって走ってくる。
なんともファンタジックなシーン。強烈でした。


地上と地下で不幸だった人も、その先にある世界では幸せになれる。吃音や水玉ハゲも治っている。
でも、その世界と私たちが生きている世界は異なる。だから、地面が割れて、遠くに行ってしまうの。
なんだかすごく寂しいような、切ない気持ちになりました。
ろ