円柱野郎

俺は、君のためにこそ死ににいくの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

特攻隊員達の最期の日常を描く作品であれば、彼らの感情に入り込んだ演出にもなってしまうのだろうと思っていたけれど、観てみると意外にサッパリした作品だった。
いや、サッパリというのは語弊があるけれども、カメラがキャラクターに寄っていかないので全体的にどこか客観的な雰囲気があるのだ。
その時代の光景を切り取って、それを自分たちが覗いているような感じというか、最近の反戦ドラマにあるような“現代人の感覚を持った者が作中に紛れ込む”ようなことで観客の代弁をさせたりはしない。
そんな安直な演出が無い。
その点で俺は凄く好感が持てる作品です。

ストーリーは、基本的に富屋食堂の女将・鳥濱トメの体験を基にしたもので、そのいくつかのエピソードを石原慎太郎が脚本として一つの話にまとめたもの。
個人的に、最近実際に知覧に行ってその話の実物資料を色々と見てきた身なだけに、かなりグッとくるものがありました。
その時代、そういった現実があったことを目の当たりにしたからこそ、繰り返しちゃいけないと思えるわけですな。
綺麗事だけを描いているわけでもないし、良い映画だと思います。

VFXはなかなか。
実物大の隼もさることながら、戦闘シーンなど実写と模型とCGを上手く組み合わせて迫力の映像が作られている。
「男たちのYAMATO」と同じ特撮監督ということだけど、こちらの方が断然良くできていると思ったね。
こういう映像のリアリティも、ドラマを引き締めるのに重要だと改めて思いました。

ただ、この作品タイトルは何とかならなかったものかなあ。
ちょっと演出内容に比べて感情に走りすぎたタイトルというか、それがちょっと個人的には気に入らなかったところです。
円柱野郎

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