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ザ・ロードのHKのレビュー・感想・評価

ザ・ロード(2009年製作の映画)
3.7
ジョン・ヒルコート監督によるアメリカ映画。キャストはヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット=マクフィー、ロバート・デュバルなどなど

謎の天変地異がアメリカを襲い、ほとんど全ての動物が息絶え、文明も消滅した時代、ある一組の父子はひたすら南に向かって歩き続ける。途中、人間食いの暴徒たちを払いのけながら、親子は人間性を失わないように懸命に生き南へと向かっていた。

ポストアポカリプスもの。キリスト教の終末思想が反映された作品である。劇中における灰色がモチーフの背景にがらんどうとしたような空間は、タルコフスキーとかタルベーラとか押井守的なものを思い浮かべてそこから引き込まれた。

人間性を失わない手段として弁証法的に対立するものとしてカニバリズムが現れるが、そこの描き方をあまり明確に描かなかったのが個人的には残念。それと、子役の演技があざとくて気持ち悪い。それが終盤に至るまでちょっとばかりつっかかった。

劇中では人間性を維持するための最後の手段として拳銃自殺が提示されるが、残り二発の拳銃のうち、一発は前述したカニバ集団から逃げるために使用されてしまう。

この映画と比較される作品として『ザ・ウォーカー』なる作品がレビュー見ると取り上げられますが、あちらがもうちょっと英雄譚的な様子を見せているらしく、それに比べるとこちらはより一般人的な視点からフォーカスを当てているらしい。

確かに他の作品と比べて見ても主人公が頼りがいがなく貧弱そうでそれでも懸命に人間性と善き者であることは失わないように努める所にこの映画の真の価値が置かれていそうであった。子供に未来を託すというやり方もキリスト教義的な終わり方でよかったと思う。

絶望的で終始暗い展開はとても良かったが、やはり個人的には愉悦にはまれなかったのは子供が酷い目に遭わないところかな。同じような映画でハネケの「タイムオブザウルフ」なんて作品がありますけど、あっちも子供に対してそこまでの重荷がないというのが残念。

いずれにしても見れて良かったと思います。
HK

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