円柱野郎

それでもボクはやってないの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

それでもボクはやってない(2007年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ある青年の、身に覚えのない痴漢による裁判での闘いを通して、日本の裁判制度に問題提起した作品。

周防正行監督は前作から10年ぶりの作品でも全く衰えていなかった。
それどころか痴漢冤罪事件を通して今の裁判をありのままに描くという情熱がスクリーンから熱気のように伝わってくる。
話の展開は特に起伏もなく、ラストにどんでん返しがある分けでもないのに、2時間半近くずっと引き込まれっぱなしだった。

被告が自ら無実を立証しない限り、被害者の証言だけで犯罪者にされてしまう“痴漢冤罪”。
痴漢をやった者が示談で済ましてすぐ娑婆に出られるのに、無実の者が自分の潔白を訴えても4ヶ月拘留された上に裁判を闘わなければならない。
そして無罪になる可能性は1%以下。
もちろん本当に痴漢した者が「無実です」と言っただけで無罪になっちゃダメだが、だからといって無実の者が有罪になっても良いのか?
そんな疑問をこの映画は真っ向から描いてる。
ラストに「どうか私を、あなたたち自身が裁いて欲しいと思うやり方で裁いてください」という字が浮かび上がるが、これはまさしく司法に関係する人々に向けた映画なんだと思ったね。

日本も裁判員制度が始まった。
もし自分が主人公の立場ならどうなってしまうだろうか…?
それを考える機会を与えてくれる素晴らしい映画だと思う。
円柱野郎

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