しろくま

悪名のしろくまのレビュー・感想・評価

悪名(1961年製作の映画)
3.6
《大映の任侠映画〝悪名〟シリーズの第1作》
〝わいなあ、この辺りを縄張りにしている吉岡組の貞やんちゅう兄さんや。おんどらに恥かかされて黙ってる訳にはいかんのじゃあ。足腰立たんほど、どつき回したるわ〟

度胸と男気があって誰からも愛されキャラの主人公〝八尾の朝吉〟こと村上朝吉(勝新太郎)。彼が故郷の河内を出て博徒となって、弟分の〝モートルの貞〟(田宮二郎)と喧嘩と恋に明け暮れるさまを描いた今東光原作の長編小説の映画化。

喧嘩を始めると威勢のいい台詞がポンポン飛び出してきて、相手を威嚇するのにはうってつけの河内弁なんだけど、映画の冒頭の会話は、よく聞いていないと何を言っているのか分からなくて、まるで外国語。特に、田宮二郎さん演じる〝モートルの貞〟の言葉はコテコテの河内弁で、喧嘩っ早い役柄にぴったり。ただ、田宮さんと言えば〝白い巨塔〟の財前教授や〝タイムショック〟の司会者の知的なイメージが強くて、やんちゃな演技はめちゃめちゃ新鮮。勝さんの腕と度胸に心酔して親分になってほしいという田宮さんの申し出に、勝さんがグッと引き寄せ〝仲良しの兄弟でええやないか〟って言うシーンがあるけど、一歩間違えばBL。〝あにきー〟と言って慕ってる感じは、菅原文太さんと川地民夫さんの〝まむしの兄弟〟、萩原健一さんと水谷豊さんの〝傷だらけの天使〟に受け継がれていっているような…。

女性陣では、のちに勝さんと結婚する中村珠緒さんが初々しくてかわいい。さんまさんの番組でお笑いに覚醒する前って、映画のヒロインだったのね。そしてラストに登場する女親分役の浪花千栄子さんの存在感は別格。周りが一瞬に凍り付くような緊迫した感じは他の人では出せないかも。流石、朝の連続小説〝おちょやん〟のモデルの女優さんね。

痛快な任侠映画で〝座頭市〟と並ぶ人気シリーズになったのも納得の面白さ。続きも観なきゃね。

視聴メモ:2023.01.23/016/GYAO
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