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クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦のHKのレビュー・感想・評価

3.8
クレヨンしんちゃん映画シリーズ第六作目。監督は同じく原恵一。キャストは矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、三石琴乃、玄田哲章、塩沢兼人などなど

秘密組織の隊員SMLの女スパイであるお色気は、秘密結社豚のひづめの飛行船から、重要なディスクを盗み出して逃走した。彼女は双葉幼稚園一行が宴会のために貸し切った屋形船近くに不時着する。しかし、彼女と春日部防衛隊を乗せた屋形船ごと捕縛され、どこかに連れ去られてしまった。

今回のオカマ枠は、アンジェラ青梅。声優さんは増岡弘さん。マスオさんやジャムおじさんですね。太って禿げたごついオカマさんは、暗黒タマタマのローズとイメージが近い。次回もまだオカマ枠はありますが、今作以上に目立った活躍はない。

ヒロインのお色気を演じるのは三石琴乃さん。エヴァのミサトさんや、セーラームーンの人。当時、原監督がエヴァにはまっていたために採用されたらしい。後に上尾先生になりますね。そして筋肉役は玄田哲章さん。アクション仮面役などで劇場版ではかなり出演していますね。

他にも山寺宏一さん、速水奨さん、石田太郎さんなど、豪勢なキャスティングですが、一番のキーパーソンとして出てくるのはぶりぶりざえもん役の塩沢兼人さんでしょうね。この二年後に亡くなってしまうというのが、何とも悲しい。この映画のぶりぶりざえもんの活躍ぶりも踏まえて、非常に忘れならない映画となる。

小さい頃は、この映画をよくビデオで見ていましたよ。これとジャングルと、あっぱれ戦国とヤキニクロードとカスカベボーイズが一番印象深いですね。温泉は借りないと見れなかったんでね。

今作より、前回が伝奇物であったのに対し、スパイアクション要素が入る。このスパイアクションは後のスパイ大作戦でもしっかりと生かされているのがいい。

今回、お色気や筋肉が所属する秘密組織、SMLは、後年のクレヨンしんちゃんに何度も登場する組織。嵐を呼ぶジャングルの提供にも出てるし、後年はもっとでてるかな。何度も出てきたイメージが残ってる。

今回の徒手格闘シーンは前回以上のクオリティーを見せる。特にお色気とママの戦闘シーンとかも含めて、全体的に肉弾戦の拍車がすごいよくなった。フランケンシュタイナーとかも出す。ウィキによるとポリスストーリーを基に作っているらしい。

劇中におけるシリアス描写は前回よりも明白に出てきており、しっかりとそのギャグとシリアスの使い分けやバランスというのが、前作以上に上手くまとまっているように感じた。

特に今作は園児一行が拉致られるという事件が起き、ひろしとみさえが両方とも絶望的な状況に困惑する描写がある。多分、今作が初めてなのではないでしょうかね。ここまで憔悴しきった二人を見るのは。

このシリアスに行けば行くほど、ギャグでしっかりとその後の展開では補正を掛ける所が個人的にはたまらない。特に筋肉が下剤入りのお茶を飲んでしまい、トイレに直行するまでのひと悶着が、これはこれでたまらない。

全体的にも、前作以上に香港アクション要素が凄まじい。何よりも飛行船上空から、戦闘機に乗って救い出そうとするところとかね。

それでありながら、しっかり日常的なロードムービー的要素も魅せる。春日部防衛隊が脱出してからの地上での同行とかね。あそこで夜空を上にして寝ている所とか、いかにも原監督だからこそ入れたシークエンスだと思う。

そして、今作からついに原監督の一番の特徴である感動要素というものを、劇中でぶち込む。クレヨンしんちゃんという変わらない日常を描く漫画において、映画で泣かせること自体が、中々の禁じ手であり、しかし、そうすれば映画的面白さが出るという皮肉、ここに今作はしっかりと切り込む。

ぶりぶりざえもん型のコンピューターウイルスにたいして、ぶりぶりざえもんの産みの親であるしんのすけが、説得をして止めるという泣ける展開。しかも、いくらでもべたべたに出来るのに、やはりぶりぶりざえもんのふざけたキャラクター性で後年の作品よりは、ある程度抑えが効いているのもいいね。

しんちゃんが泣くシーンも、上から被ったヘルメット越しのために顔が見えないというのがまたいい。絶対に正面から泣く姿勢をアップで見せないのは、クレしんに通じる一種の照れくささ、ハードボイルドさを感じる。

今作ぐらいから、敵だろうとも救出するというこれまでの完全な勧善懲悪とは一線を引く、道徳的教えというものをしっかりとやっていくのが、今後、家族向け映画としての風格とかを醸し出してきたのではないのでしょうかね。

最後のぶりぶりざえもんの一押しなども含めて、ぶりぶりざえもんが影の主役のようにも感じる。これが最初で最後の塩沢兼人さん演じるぶりぶりざえもんだと思うと、そういう意味でも記念碑的な作品になるのでしょうね。

いずれにしても見れて良かったと思います。そういや前作と同様、原作者の臼井さんでてましたね。殴られてましたね。
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