カツマ

ホーリー・マウンテンのカツマのレビュー・感想・評価

ホーリー・マウンテン(1973年製作の映画)
4.2
完全にいっぱい食わされた。こんなに意味不明の連続なのに、最後には晴れ晴れとした空を眺めるように霧が晴れていくのだから。カルトの帝王ホドロフスキーの作品の中にあってキングオブカルト、正に頂点に君臨する聖なる山。だが、終わってみれば小さな破綻など、古い思い出のように微笑ましい。ゾワゾワと這う虫、量産型キリスト、爆発するカエル、前半の爆裂なアート表現は後半への布石であり、心を素っ裸にして感じ続ければ、自ずと神のような啓示が訪れる(ような気がする)。さぁ、恐れることなく聖なる山へと登りつめるのだ。その先にはホドロフスキーが用意した我々へのメッセージが待っている。

十字架に張り付けにされたキリストによく似た風貌の男。彼は自らに石を投げつける子供達を追い払い、そこにいた両足不全の男と共に街へと下りた。
ところが街ではキリストの人形を売り捌く行商人に拉致され、キリストの人形を作るための型取りをさせられる。何とかそこから逃亡したキリストに似た男は、そびえ立つ神の塔の中に逃げ込むと、そこには神への啓示を代行するかのような錬金術師が待っていた。
錬金術師は男に語る。聖なる山には不死を司る何かがあるのだと。彼は不死を求める8人の男女と共に聖なる山へと登り始めるのだが、その頂上に至るまでには様々な誘惑が待ち受けていた。

前半の意味不明な描写の連続でもしかしたら心が折れてしまうかもしれない。あのエルトポをも凌駕するカオスの連続には咀嚼しきれないクエスチョンが何度も通りすぎ、『自分は何故この映画を見ているのだろう?』という自問自答との激闘が待っている。にも関わらず、ラストにはこんなにも清々しい気持ちにさせられるのだ。そんなのありか?と思ったが、とてもホドロフスキーらしいラストだった。カルトと呼ばれながらメッセージは極限までピュアでダイレクト。それでも今まで見たことがないタイプの映画なのは、そう、間違いなかった。
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