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地球へ・・・の青のレビュー・感想・評価

地球へ・・・(1980年製作の映画)
3.4
原作を流し読みしてから鑑賞。本作は話が詰め込まれている割に、テンポはゆっくりなので、途中眠くなってしまった。
宇宙船が蒸発する描写やテレパシーを使うときの頭が光る演出が不気味でかっこよかった。80年のアニメとしては結構革新的だったのでは?ただ、どの場面でも足音が単一的だったのは残念。あと、フィシスとキースの髪色はチェンジしてほしい。原作絵からすると、キースは本作よりもう少し艶のある男だよ。
原作から設定や心理描写を改変している箇所があり、ちょっと残念だった。分かりやすさと時間の制約のために改変したのだと思われる。
ジョミーの母親を、いわゆる「母性」と呼ばれるあの心理属性をもつ人物として描いたのは、原作が描こうとしたコンピューター管理社会批判の意図からすると真逆の描写になってしまっていないだろうか。アニメだけを観ると、あの母親は、管理される息子に同情を示す人物、つまり、心の奥底では管理社会に疑問を抱く可能性をもつ人物であるかのように見える。しかし、原作ではそんなことは無く(と記憶している)、息子にとっての一番の利益とは目覚めの日を迎える仕方で合理的にコンピューターに管理されることだと信じてやまない母親像だったはずだ。
また、原作ではトーニィにとってのジョミーは血縁関係のない「グランパ」なのに、本作ではマジモンの息子である。原作では、ジョミーと血縁関係がないのに血縁関係者かのような振る舞いを見せるトーニィの底知れなさが良かったのに、本作で本物の息子になってしまっては原作の不気味さが薄れてしまう。原作も本作も主題は愛ではないので、父親ジョミーとの愛情的な交流がないように映ってしまうことで、愛の話に注意が向けられてしまうことも残念ポイント。
母体で子どもを育てることへの賛美が透けて見えた。原作でも同様の描写はあるが、本作ほど安直な態度を示してはいない。
原作とラストが結構異なるように見えた。そもそも原作のラストがよぅ分からん感じだったので、本作が綺麗にまとめてくれたのか、まとめることに失敗しているのか判定がつかない。
総合すると、原作者が描こうとした主題や意図に、アニメ制作側の理解が足りていないような印象を受けた。(追記: アニメ独自のテーマや解釈の予知があれば、原作から乖離していようと別にいいのだが、アニメ表現(長回し風のカットとか)以外にアニメの独自性をうかがい知ることができなかった。)
青