青

寫眞館の青のレビュー・感想・評価

寫眞館(2013年製作の映画)
3.5
写真は半永久的に残る。そこに写された表情も半永久的に残る。写された人物が亡くなった後も、その表情は残る。写真は表情をはじめとする何かを後世に伝達する。被写体の一瞬の表情は、意図や目的を抜きにしても、次の世代に伝達されてしまう。だから、写真屋にとって、シャッターを切る時の被写体の表情をいかに引き出すかは、プロとして拘るポイントの一つなのだろう。
後世に残せるものは少ない。人はいずれ死んでしまうし、街は跡形もなく焼けたかと思えば、さらに跡形もなく復興する。しかし、笑顔であれば、写真に写すことで残すことができる。もちろん、写真だって物質的に消滅してしまうのだが、彼女が笑顔だったという事実を消すことはできない。
写真の中の人物が幸せそうな笑顔なら、その写真を観ている人の心境も穏やかになれるはず。父や母や息子の笑顔につられて、主役の女性も笑ったように。写真に映る笑顔を観た次の世代が笑顔になれば、いうなれば笑顔が次の世代に連鎖すれば、彼女は後世に少なからず何かを残せたことになるだろう。

ささくれチックな淡い線が良かった。
淡くくすんだ色遣いと平面的な背景がこの作品の特徴だ。背景が平面的であるから、人物や乗り物は画面に対して上下左右にしか動かず、奥行きのある立体的な動きはほとんどない。一方で、人体に関するアニメーションは滑らかによく動いていた。だから、視覚的な全体の印象は平面的な紙芝居なのに、ちゃんとアニメだと思うことができる。
2005~2015年頃って平面っぽい背景によく動くアニメを乗せる作品が出回った頃だった気がする。
青