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最期の祈りの青のレビュー・感想・評価

最期の祈り(2016年製作の映画)
4.0
決断を下すのは、医師だけでも家族だけでも本人だけでもなく、その場に居合わせた全員である。ただし、医師が方向性や見通しを示すことはある。その示し方が「こっちの選択肢の方が良い」という誘導であってはいけない。しかし、医師が自身の経験を参照して見通しを示すことは、多少の誘導を含んでしまう。また、本人の利益になることが、社会や家族からすれば危害だと認識されることもある。終末期の選択は、どうしても矛盾を含んでしまうのだ。だから、医療従事者はどうやって声をかけたら良いのかを含め、直面した事象に対して悩む。
直面した事象を何らかの方法を用いて分析し、論理的に考えて結論を出したところで、目の前の患者や危篤状態にある大切な人に対して本当に重大な選択を下すことができるのか、私には自信がない。

神の信仰はこういうときの寄る辺になる。経過が上手く進んでも、ダメでも、それは神の意志(自然な成り行き)だったのだと解釈される。厚い信仰心を間近で見ている医龍従事者たちは、宗教に対して距離を置きつつ、他方でその威力・効果を知っているという、これまた矛盾に近い心理を抱えている。今作の医師のように、沈黙して見つめ続けるしかない。

吹き替え版で鑑賞したのだが、医師が覚醒状態の悪い患者にも伝わるように大きな声で呼びかけたオリジナルの場面は、冷静に対処しているかのような淡々とした声に代わっていた。もっと騒々しいのに。残念。
青