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人生、ここにあり!のろのレビュー・感想・評価

人生、ここにあり!(2008年製作の映画)
4.7

「我々はゼロから始め、笑われもしました。出来るわけがないと。ところがです・・・」


1月末はゼミレポート提出の締め切り。
前期はエリザベス・キューブラー・ロスの『ライフレッスン』を軸にレポートをまとめましたが、今回はアドラー心理学にチャレンジ!哲学者 岸見一郎さんの『嫌われる勇気』を読んでいるところです。

私はいつも今学んでいることと映画を結びつけて考えています。「夜と霧」について発表する前には「シンドラーのリスト」「夜と霧」「アイヒマンショー」、環境問題について学んでいる時は「不都合な真実」「ダーウィンの悪夢」を観ました。
アドラー心理学を学んでいると、「何か、人生を見つめ直すきっかけになるような作品が観たいなぁ」という想いが湧きあがってきました。今回は今作をチョイス。まさに、笑って泣ける”人生讃歌エンターテインメント”でした!


〈あらすじ〉
ある日、労働組合員のネッロは所属していた団体から異動を命じられる。異動先は廃止された精神病院の元患者たちの協同組合だった・・・。

とてもユニークなキャラクターたち。
「人生、何か仕事はしないと」
「俺には奇跡って仕事がある。UFOの障害年金も受給してる。支払いは毎月27日だ」
思わずふふっと笑っちゃう( *´艸`)
赤毛のミリアムはころころ彼氏の名前が変わる。神経質なファビオのお父さんの職業は会計士になったり、時にはインテル(サッカーチーム)の監督になる。でもとにかくみんな楽しそうに話すんですよね~。

そんな彼らにネッロは提案!
「みんなで一緒に仕事をして、お金を稼がないか?」
初めは戸惑っていたみんな。
でも「医師ではなく皆さんが組合のことを決めるんだ」と言われてから、自信が出てきます。多数決を取る時の嬉しそうなこと!得意げにそろそろと手を挙げるみんなの顔はきらきらと輝いています(*´ω`*)


そんな彼らの会話の中で印象に残ったのは投薬の話。彼らは1日3回 2ミリグラム~8ミリグラムの薬を投与される。それによって朝起きることが出来なかったり、大事なことを忘れてしまう。
これ、私も実際に体験していることなんです。
私もうつ病を患って間もない頃、いろんな薬の種類と量を試しました。薬が効きすぎて1日だるく起き上がれないこともありました。種類と量によって1日の過ごし方がだいぶ異なるんです。今 私が夜飲んでいるロフラゼプ酸エチル錠という薬はとてもよく効く薬なので、4分の1サイズで処方してもらっているんですよ。精神疾患の薬=脳の薬なので、一歩踏み外すととてもコワイ。
何気ない会話でしたが、「わかるなぁ~そうだよね!」と共感!


精神疾患で切手も上手く貼れない。彼らは仕事の緊張や責任に耐えられない。精神疾患は治らないし、彼らに普通の生活は危険だ。

お医者さんはそう言っていたけれど、本当にそうだろうか?
この物語に登場するキャラクターたちは皆、仕事をするという生きる目的を見つけた。そして仲間と一緒に働く喜びを感じた。それは彼らにとって夢のような出来事で、生きることに希望を見出せたはずなんだ。「自分もまだまだ頑張れるぞ!」って。


心理学者アドラーは対人関係の最終目的地は「共同体感覚」だといいます。かみ砕いていうと、”「ここにいてもいいのだ」という所属感”です。その感覚を持つために必要なことが3つ。「できない自分」をありのまま受け入れる”自己受容”、他者を信じるにあたって一切の条件をつけない”他者信頼”、「わたしは誰かの役に立っている」と実感する”他者貢献”です。

この物語にはすべて含まれているような気がします。それぞれが自分の出来る範囲のことをして、個人の才能を活かす。他者を信頼することで仲間意識が生まれる。人の役に立つことで自分の価値を実感する。生きることとはまさにこういうことだなぁと感じました。


そして感じたことがもう1つ。
私は人と話すことが怖くなったり、家の外に出るのが億劫になることが多々あります。今作では精神疾患をバカにする人もいる。働けないだろうと勝手に決めつけたり、侮辱してくる。
世の中は善意の塊ではありません。しかし、決して「みんな」が悪いわけではないのです。「みんなが自分を嫌っている」「すべて間違っている」。そう思うこともあるけれど、実際はそんなことはない。
『嫌われる勇気』の言葉を借りて言うならば、「どうでもいいはずの ごく一部にだけ焦点を当てて、そこから世界全体を評価」していたのですね。私自身、視野が狭くなっていたのかな~と気付かされました。


「罪悪感は何の役にも立ちません。過去から学び、再出発を」
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