シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

地獄に堕ちた勇者どものシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

地獄に堕ちた勇者ども(1969年製作の映画)
4.0
ツタヤDISCAS試聴。
ナチスがらみの話?程度の予備知識だけで試聴。邦題の「地獄に堕ちた勇者ども」は、長いナイフの夜に粛清された突撃隊の古強者どものことと気付く。彼らの乱痴気騒ぎと破滅を後景にして、ナチに段々と取り込まれていく鉄鋼富豪の一族の運命を悲劇的に描く。
つまりこれは、ナチスドイツ版「ハムレット」ですね。母を寝取られるハムレット=マルティン(殺されるのは父王ではなく祖父の鉄鋼王だが)。「ヘーゲル曰わくエリートは個人的道徳を超越する」などと鼓吹する親衛隊員に影響され、また、少女姦で人間性に別れを告げてしまった彼に最早「生きるべきか死すべきか」というハムレットの煩悶ないしは優柔不断はない。マルティンは母を犯し、最後には母の情夫と母に自死を強いる。
してみると、ハムレットの優柔不断が実は人間性にとって重要な核であったことに気付く。女装や乱痴気騒ぎをしていたかつてのマルティン(女装癖は演じたヘルムート・バーガー自身のものであるという)や突撃隊員にも生々しい人間性の片鱗はあった。
不品行な「勇者ども」を地獄に屠った後のナチスドイツの人間性の行き着いた先については我々もよく知っている。
実に面白い映画でした。