KouheiNakamura

未来は今のKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

未来は今(1994年製作の映画)
3.0
汗をかいて生きてるんだ、その未来は今。


コーエン兄弟監督第5作目。大企業ハッドサッカー社の社長がある日突然飛び降り自殺してしまう。順風満帆な会社だったのに、なぜ…?社長が飛び降りたちょうどその時、一人の新入社員がハッドサッカー社の門を叩いていた。彼の名前はノーヴィル・バーンズ。彼のアイディアがのちにハッドサッカー社を救うことになるとは、この時はまだ誰も予想していなかった…。

極めて普通のヒューマンドラマ。心温まる、ちょっぴりファンタジー風味のコメディ。当時のスターキャスト、ティム・ロビンスやポール・ニューマンやジェニファー・ジェイソン・リーらがその魅力を振りまいている。
…ここまでならば90年代の普通の映画だし、特段見るべきところもない。ただ一つ、この映画はあのコーエン兄弟監督作品なのだ。独特かつシュールな編集、キテレツなれどどこかリアリティあるキャラクター、音楽のセンスなどこの映画にはいわゆるコーエン兄弟らしさがほとんど見られない。ロジャー・ディーキンスの撮影は相変わらず美しいが、そこまで目立つほどでもない。

これまでコーエン兄弟の監督作を順番に見ていったからこそ分かる、作風の大衆化。コーエン兄弟監督作の常連俳優を排した、有名スターの起用。そしてその失敗。コーエン兄弟には大作は似合わない。本人たちもそれを自覚したのか、次作「ファーゴ」からは予算を抑えてキャストも気心知れた常連俳優陣に戻している。そしてその目論見は当たり、遂にはアカデミー賞を手にすることになる。

今作は決して駄作ではない。映像もストーリーも水準はしっかりクリアしている。しかし、明らかにミスキャストなティム・ロビンスやポール・ニューマンらの演技や滑り気味のギャグを見るのは少々辛いものがあるのも事実。コーエン兄弟ほど才能ある人たちでも失敗することはあるのだなあ…ということを知れたのは良かった。むしろこれがあったからこそ、傑作「ファーゴ」が生まれたのだと考えるべきか。
積極的にオススメはしませんが、そこそこに楽しい一作ですよ。
KouheiNakamura

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