むさじー

ワイルドバンチのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

ワイルドバンチ(1969年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

<暴力の時代終焉とアウトローの無常>

鉄道事務所襲撃で手に入れた袋を開けると中身は鉄クズで、この仕事で足を洗おうと思っていたパイクは言う「俺たちの時代は終わりだな」。
銃を持って闘った最後の時代、それは正義や悪を超えて、暴力によってしか生きられなかった時代でもある。
そんな時代の変化から取り残された無法者たちが、いかに笑い、いかに闘い死んでいったか、そんな生き様と滅びの美学が描かれる。
アリの群れにサソリを入れて火をつける子どもたちの残虐な遊びが描かれるが、ラスト、不敵な笑みを浮かべながら勝ち目のない闘いに挑む4人の男たちは、死に場所を求めてアリの群れに飛び込むサソリのようでもある。
本作は迫力ある銃撃戦で名高く、残虐な暴力描写、女性蔑視と思われるシーンは数多いが、同時に男たちの駆け引きの裏にある感情の起伏がさりげなく描かれ、バイオレンス&アクションだけの西部劇でもない。
特にパイクとソーントンの関係は微妙で、かつてパイクの仲間だったソーントンが今は追跡者になり、ソーントンに命を狙われながらもパイクは常に彼を気にかけている。
そして、パイクが銃撃戦の末に死にゆくとき、それまで終始疲れ気味だった表情が少し生き生きしているように見え、パイクの魂の叫びを受け止めたソーントンは、残された者の悲哀を味わうことになる。
二人だけに分かる思い、秘められた友情が切ない。
暴力の裏に、去りゆく時代と去りゆく者への鎮魂が込められ、哀愁が漂うペキンパー・ワールドだが、女性の描き方の粗さはやはり気になる。
むさじー

むさじー