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吶喊(とっかん)のHKのレビュー・感想・評価

吶喊(とっかん)(1975年製作の映画)
3.7
「日本のいちばん長い日」「激動の昭和史 沖縄決戦」などの岡本喜八監督によるATG配給の映画。喜八プロダクション初作品。キャストは伊藤敏孝、岡田裕介、高橋悦史などなど

100年程前の奥州安達ケ原。戊辰戦争の真っ只中、二人の男たちが女と筆おろしをする。欧州列藩組は官軍に押され、敗走の最中であった。これに起こった一人の男が農民や百姓を集めたゲリラ隊カラス組を結成し、最後の戦いに挑む。一人の男はそれに参加するが、もう一人の男は彼を軽蔑しやらなかった。果たしてどうなるのか。

「独立愚連隊シリーズ」「日本のいちばん長い日」「沖縄決戦」などでも無能な上層部に翻弄され死んでいく無惨な若者を描いている喜八さん。今回はもっと昔に戻って明治維新真っ只中の戊辰戦争に焦点を当てた作品となっている。

正直連続で映画を観ていた最中であったため、ぼーっと見てしまった映画になってしまった。方言をひっきりなしに使っているせいか、台詞をほとんど聞き取ることができず。今度は字幕ありの版を見てみたいものです。そのせいかストーリーラインはあまり追えることはできなかったのですが、映画内で行われる勢い溢れた演出は堪能することができました。

この映画、「喜八的ダイナミズム」の宝庫なんですよね。ここまで純度の高い喜八映画も珍しい。「血と砂」ではストレートすぎた反戦メッセージを今回は抑え、あくまで明るい結末で終わるのが良かったのかもしれませんね。

しかし、内容自体はかなりとっ散らかってしまっているのも事実です。もうちょっとカラス隊のお話にずーっと焦点を当てていた方が良かったのかもしれません。

しかし、終盤における爆発の中、行われるセックスシーンなどは、ある意味迸る若者のエナジーというものを喜八イズムの中で極端なまでに描き切ったような映像美で良かったのかもしれません。撮影した木村大作の影響もあるのではないのでしょうか。

それでありながら、戦争の悲惨さをユーモアあふれるような演出と台詞で物語るのも喜八イズム。今回は斬首やら、手首がとれたりするやらでひたすらバイオレンス展開も辞さないやり方でしたが、そこは非常に見ごたえあってよかったです。

ぜひとももう一回見てみたいですね。ATGだからこその自由度を見事に生かした純喜八映画であると思います。観たい人は観てください。
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