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昼下がり、ローマの恋のNMのレビュー・感想・評価

昼下がり、ローマの恋(2011年製作の映画)
3.2
3話のオムニバス。
あるタクシー運転手が話を案内する。
彼がアーチェリーの矢を放つごとに話がスタートするので、恋のキューピッド的存在らしい。

1話目には2話の人物が、2話目には3話の人物が
それぞれちらりとは登場するが、ストーリーはそれぞれ別個。

1話目「青年の恋」。
弁護士を目指すロベルト。田舎町にゴルフ場を作るため、一件の民家の立ち退き交渉を任される。上手くまとめたら出世のチャンスだ。冷徹に任務を遂行せねば。

だが、赴いた町の人々は個性的で人懐っこく、あたたかい人ばかり。その地で激しい恋をし、愉快な仲間たちとの友情も知る。

自分は予定通りこのまま帰って、弁護士となり、婚約者と結婚するべきか、それとも……?

爽やかで、胸のすく、それでいてほのかに切ないストーリー。村の輝くような海、晴天、草原は若さの象徴のよう。眩しい。

主人公は既にビジネスパーソンだが、この村で、忘れていた青年のような心を思い出す。
もともと、良心的で真っ直ぐな人物であることは、冒頭の会話から見て取れる。

社会的成功を追い求めていたが、村の魅力を通して、本当に大事なものがなにか、改めて見直し、気付く。自由や責任と折り合いをつけ、若い自分と決別していく物語。

2話目「中年の恋」は
打って変わってコメディタッチ。
これだけ毛色が違うのでメリハリが出ている。

有名ジャーナリストのファビオは、着実に勤め上げ、あと2年で定年。

ある日パーティで、美人精神科医と知り合い、一度だけとの約束で彼女の家を訪れるが……。

人生がめちゃくちゃになる、救いのないの話のはずなのに、一切暗さがないのが見事。
どんな状況でも落ち込まず、感情は発散して解消しつつ、こんなユーモアを理解できる状態でありたい。
3話目にもちらりと登場するが、更に悲惨なことになった様子。それでもユーモラス。

最後の3話目「熟年の恋」。
アメリカ人のエイドリアンは、大学教授を定年になった考古学者。 離婚して、2年前から単身ローマにいる。

彼は数年前、心臓移植を受けており、無理はできない体。血圧を上げないよう、感情の起伏を抑えて暮らしている。
しかし、親友の娘に会った途端、一目で恋に落ち……。

こちらも厳しい現実を抱えているが、やはり深刻さはあまりない。何もかも抑えて生きる生き方を
変えるチャンスを迎える。
もう余生を静かに過ごすだけのはずが、人生は最後まで分からない。

思い詰めても、人生は好転しない。人生に落とし穴はある。堅実に生きるのも良いことだが、思いがけず幸運を掴むこともある。

全編に渡って
ローマ、イタリアの明るさに溢れた作品。
どれか一つ観るだけでも楽しい気分になれる。
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