ジグモンドによる詩情溢れる映像で
淡い光射す風景の中
移民達が踊り、歌い、演奏し、愛し合い、笑い、飲んだくれる。
まるでその後に訪れる
惨い現実に耐えようとするかのように。
撹乱の徒労とはこの事か、とばかりに
必死に足掻くもアメリカの正義に打ちのめされた
主人公達はいずこともなく去っていく。
チミノ監督は歴史から忘れ去られたある時代の嘆きと怒りを
余すことなく蘇らせたかったのだろうか、映画全体から執念を感じた。
100年前も今も
ろくでもない考えの持ち主が
気に入らない弱者を目の敵にする
のはまるで変わらないアメリカ。
かつてそこにあったはずの風景、
そこにいたはずの人々、
そこに生きていたドラマ。
砂塵の中に消えていく。
帰る場所を見失なった主人公の記憶の中だけに残っていく。
壮大な感傷。
クリストファー・ウォーケン扮する
痩身のガンマンが最も魅力ある人物だったが
大学の卒業式で
ドヤ顔で答辞を述べた時と
うってかわって
現実に疲れアル中の傍観者と化した
ジョン・ハートの情けなさといったら。
冒頭で準主人公かと思いきや、最後まで翻弄されるだけの情けないキャラクターを放り込む
監督の容赦の無さよ。