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浮き雲のefnのレビュー・感想・評価

浮き雲(1996年製作の映画)
3.8
 酔っ払いが盃を煽る瞬間や拳を振り下ろす動作といった感情を誘導する運動を可能な限り排除しているのがいい。過度な表現がないから新オーナーのふてぶてしさや職安の嫌らしい態度が作品を負の方に引っ張っていって重みを与えている。
 最後のレストラン開店もただ空を仰ぎ見る二人の視線を俯瞰から捉えるだけ。普通は音楽や役者の表情で派手に盛り上げるんだろうけど、あくまで抑制的に表すことで、それまでの失業や生活のあれこれ見事につながっている。
(省力の技巧と感情表現のバランスのとり方は小津に通じるものがある。)
 ただ、色にこだわっている割に物語と連動していないから少し蛇足に感じた。紅一点が好きなのはわかるけど、それはショットだけではなく映画全体から観ての一点にすべきなように思う。
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