ナチの残滓が戦後の映画界で薬漬にされて砕け散る、という芸能が抱える業がカリガリスタイルで示されていてかなり見ごたえがあった。
女優から見て観客がダッチアングルでグラグラ揺れるショットをはじめて観た。他にも撮影所の蝋燭が乱反射して画面を覆う画面とか序盤の薬付フォスパートの不安感がすごい。ベッドシーンは覆いをかけた楼台が異界っぽさを出ているし、神経科の病棟は真っ白でなぜか丸窓がそこかしこにある。
ドイツ表現主義的モノクロを経由してシュールレアリズムやサイコサスペンスがごちゃっとまざった傑作。
あとスタンバーグみたいに振り回される新聞記者がかわいそう。