真鍋新一

網走番外地 悪への挑戦の真鍋新一のレビュー・感想・評価

網走番外地 悪への挑戦(1967年製作の映画)
4.1
5作目以降、演出面でくたびれが目立っていたシリーズが9本目でついに持ち直した! うれしい!

まず、元囚人である健さんが不良少年たちを教育する側に回ってそれまでと立場が逆転する『ダーティハリー2』のパターンですでに面白い。『続網走番外地』で使われていたジャジーなBGMが再登場し、不良少年たちが『ウエストサイド物語』のマネをして健さんを威嚇する。

なんの説明もなく通りすがりの健さんが立てこもり犯(小林稔侍)を撃退する冒頭のハッタリも素晴らしいし、前田吟(映画初出演らしい)、谷隼人、石橋蓮司のいる不良少年更生施設のメンツも濃い。さらに今回は『キューポラのある街』で北朝鮮に帰っていった市川好郎や、輝男監督がシリーズの合間に松竹で撮った『日本ゼロ地帯 夜を狙え』からスライドしてきた真理明美もおり、健さん的には他流試合の趣きもある。今回の三原葉子はまさかの老け役で、使い勝手がよく、決まりきった役ばかりやらされているグラマー女優の真の実力を見た。

これまでのシリーズで一切無視されてきた各作品との関連性が、第1作の回想を挟むことで初めてハッキリと示されるが、これがかなり効果的。健さんと谷隼人とアラカンの男同士のゴリゴリブロマンス強調演出も、今で言うBL感をかなり意識的に匂わせており、その先見性には驚くばかり。

鬼寅親分の大活躍については観てのお楽しみ。ロケ地の博多の場面で一瞬映る映画館の看板に、今まさに観ている映画のビジュアルが「近日公開」の文字とともに…どんだけ時間がなかったんだ😰

ここまで9本連続で撮り続けた輝男監督のラストとなる次作では健さん以外のレギュラーをほぼ排除して、1作目のドス黒い作風に原点回帰したセルフリブートなので、娯楽映画としてはこの9作目が一区切りとなりそう。
真鍋新一

真鍋新一