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オール・ザット・ジャズのOtoのレビュー・感想・評価

オール・ザット・ジャズ(1979年製作の映画)
3.6
思ったよりも難解...。ミュージカル版『8 1/2』と言われていて納得。編集画面とか妄想世界と台詞がリンクしていて、何を見ているのか自分もわからなくなっていく感じがあった。この複雑さこそが魅力なのかもしれないけど、没入のためにはもう少しわかりやすさが欲しかったなぁ。

『SAVE THE CAT』の10ジャンルの中で「人生の岐路における唯一のミュージカル映画」と紹介されていたので観たけど、たしかに陰と陽の共集合というか、暗い物語をいかに明るく伝えるかに挑戦しているように見えた。主人公の共感性をユーモアによって担保している。

言い寄ってくる女性が自分ではなく仕事が欲しいだけに見えるという辛さとそんなこともやってしまえば忘れてしまうという悲しさが良かったし、自分と一緒になると幸せにならないと知っているから彼女と距離を置くみたいな悲しみも伝わった。

唯一無二のクライマックスではあるけど、人生の岐路ジャンルの中で腑に落ちるオチを迎えた映画に出会ったことがないので探っていきたい。
テーマはラストまでみてわかったけど、孤独な人間とって唯一の拠り所であり他者とつながる手段である創作の尊さ、失って得られるもの、とかかな。

ライトモチーフとしてのヴィバルディ、踊りながら説明を行う、などは学びがあった。

構成
<一幕>
・酒と薬に溺れる劇作家、映画を編集中
・死は今や花形(下半身に正直)
・オーディション。女遊び、家族を大切にしてない、依存症、約束を守らない、仕事人間、妄想癖(過去のトラウマ)。ヴィヴァルディがライトモチーフ
・彼女に浮気がバレる
・彼女が仕返しで浮気する
・仲直りして編集を進める
<二幕>
・娘が再婚するように求めるが傷つけたくないと断る(踊りを教えながら)
・体調不良で演出ができないことから元妻と浮気の口論(振付しながら)してたらひらめく。リハでストリップ演出
・プロデューサーからは不評だが妻は感動。編集も終わらないが、自宅ミュージカル
・笑い声が聞こえない、鉛筆を折る、過労で狭心症の診断で入院し、ショーは延期。代わりの公演を用意
(平凡になるのが怖い、辛く反省しない
・新作が酷評、体調が悪化、彼女が浮気。組合が死亡に保険をかける。
・手術後に幻覚が悪化して病気の自分を演出して映画を撮る夢。悲しませた家族が別れを惜しんで歌う。
・手術は成功するが、発作が消えず、病室を抜け出す。頭では編集映画が流れる
<三幕>
・見つかって縛られる。虚実がわからない中、死ぬ前に最後のショー。客席で知り合いが皆喜ぶ、もう嘘はつかないと妻に誓う。出資者は冷静に保険の話をする。
・死の天使に近づき、運ばれる死体。
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