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戦場にかける橋のryosukeのレビュー・感想・評価

戦場にかける橋(1957年製作の映画)
4.1
シネスコサイズでジャングルの大自然とそれを舞台にした捕虜収容所の物語を映し出したスペクタクル映画。
ロングショットによる雄大な自然の描写とそこに小さく映し出される人間の構図が歴史の大きな流れの中に消えていくちっぽけな登場人物たちと対応している。
同じ日本軍捕虜収容所である「戦場のメリークリスマス」とはどうしても比較してしまう。どちらも長回し主体で緑と茶色ばかりの光景なのだが、印象的なカットは「戦場の~」の方が多かった印象。収容所の様子も本作の方が気楽な感じ。同じような立ち位置のビートたけしと比べると、本作の早川雪舟は早々に弱さを見せて、若干迫力不足。
ところどころに挟まれるドキュメンタリーっぽい場面に見られる映像の迫力では本作が勝るか。大量の捕虜の喧噪、一面を蝙蝠に覆われる空等々。
日本兵を射殺した後、静寂の中で現地の女たちが佇むカットは凄味がある。
幼い日本兵が落とす母の写真や流れてくる橋のプレートなどのワンカットを的確に挟むことで劇的な効果を出している。
非人間的な戦争の原理が語られる中で階級詐称、仮病と人間味のあるアメリカ兵の描写が魅力的に映る。
やはりラストの橋の爆破のシーンは緊張感もあり白眉。「キートンの大列車追跡」のオマージュと言っていいのだろうか。(30年以上前に本作に劣らない描写をしていたキートンの凄さも再確認した)
やっと自らの人生に意味付けすることに成功したと思いきや、どうしようもない状況に追い込まれる大佐が不憫で虚しい。倒れこむ自らの体で爆弾を起動させてしまうことも皮肉。演出としてはちょっとやりすぎ感はあるが。
全身全霊をかけて同じイギリス軍である両者が行ってきたことが虚しさしか残らない結末になるという、戦争の不条理を感じさせる幕引きである。
最初と最後に大空を自由に飛ぶ鳥を地上の人間たちと対比的に映し出す。
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