tjZero

秒速5センチメートルのtjZeroのレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
3.7
タイトル通り、速度とか距離の表現が秀逸なアニメーション。

速度に関しては、桜の花びらが落ちたり、雪が舞い降りたり、ロケットが宙に向かって飛んで行ったり、頬を涙が伝ったり…といったそれぞれの”速さ”の描写が絶妙で、観ていて生理的に気持がいい。物語上の効果も高い。

そうしたすぐれた表現によって支えられているので、人と人との”心の距離”みたいな眼に見えないものまで、しっかりとリアリティを持って感じられる。

演出面で優れた場面は他にもあって、たとえば第2話でヒロインが淡い恋心を抱いている時にコンビニで買うのがヨーグルト飲料で、いざ告白しようとキリッと決意する場面ではコーヒー飲料を…みたいな、さりげないんだけど効果的な演出が各所に機雷のように仕掛けられていて、いちいちコチラの胸を撃つ。

そうした表現の数々で充分満足してしまうので、主人公たちのポエムみたいなナレーションや情緒過剰なセリフのいくつかが余計に感じられてしまう所もある。
そういう”こっ恥ずかしい”部分も新海誠監督作の個性ではあるんだろうけど、ちょっともったいなく感じたりもした。麺とスープだけで充分美味しい丼に余分なトッピング加えちゃったみたいな…。
tjZero

tjZero