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バットマン ビギンズのTEPPEIのレビュー・感想・評価

バットマン ビギンズ(2005年製作の映画)
4.2
Why do we fall?
So we can learn to pick ourselves up.
クリストファー・ノーラン最新作「ダンケルク」の新たな予告編に胸踊りながら、まさに代表格の作品であるダークナイトトリロジーを評価したい。
ノーラン監督はとにかく素晴らしい監督だと思う。彼はエンターテイメント性が強いキューブリックであり、古典的な素材で新たな解釈を生んでいる。そんなクリストファー・ノーランは「メメント」「インソムニア」と手掛けた後、誰もが予想だにしなかったバットマンというブロックバスターに着手したのだ。とは言っても、製作当時はやっぱり戦犯「Mr.フリーズ」の存在を抹消できるくらい、新たなバットマンを必要としたワーナーは大胆なイメージチェンジを提案した。それがコミック作の中で一際暗さが凄いダークナイトシリーズを下敷きにした映画だった。「メメント」のクロスカッティング多用で人気を不動にしたノーランは「インソムニア」ではより伝統的で文学的作品に仕上げた印象があり、「バットマン ビギンズ」のような作品とのマッチは想像も出来なかった。「ダークナイト」を観て考えることは「ビギンズ」はまだノーランがフランチャイズの束縛から逃れる覚悟が100%無かったということ。ある意味、本作は実験的だったが結果はとても面白い映画に仕上がった。クリスチャン・ベイルはこれまでのバットマン像からは1番遠く感じた。それでもジョージ・クルーニーやヴァル・キルマーよりは映えていたのは事実。このクリスチャン・ベイルのブルース・ウェインは恐怖の克服をテーマに葛藤するのだが、それがトリロジーすべてにおける根本的な存在であるので壮大なドラマとして成立している。例えば真面目に怪人を倒す仮面ライダーは殺害という行為において、それが正義であるか、という何だか馬鹿馬鹿しい考えをこのダークナイトシリーズは驚くほどに深く描いている。正義のために悪に染まり、自らを恐怖から解放するという過程、この「バットマン ビギンズ」はこれまでにないバットマンをこれでもかというリアリズムで構築している。しかもそれが超絶格好いい! このリアリティやダークで重厚感のあるストーリーはさすがダークナイトシリーズならではだろう。結果DCはこの方向性でという風潮も出てきたが、最近それが裏目にも出てる。とにかく、アクションいっぱいで面白いストーリーに溢れているにも関わらず、考えさせられる作品である。それにしてもバットモービルを買おうとしたクリスチャン・ベイルの気持ちがわかる。ノーランに断られたらしいが。
総評として、伝説の幕開けとして再起動したノーランのダークナイトシリーズ、「バットマン ビギンズ」は見事なイメージチェンジを果たしただけでなく、詩的で奥深いテーマを上手く融合させた驚異的な一本である。スパイ映画ファンには嬉しい描写が山ほどあるので、やはりノーランは相当オタクと見た。新作に期待してます。
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