茶一郎

8 1/2の茶一郎のレビュー・感想・評価

8 1/2(1963年製作の映画)
4.9
『人生は祭りだ。共に生きよう』

 この映画は、鑑賞しながら、映画が完成に近づいていくというメタ的で面白い映画体験。作り手の苦悩、映画監督である主人公が製作中の迷い、苦しみ、理想的な妄想に逃げる様子が、現実と空想を行き来して描かれる。
後の作品に影響を与え続けている作品。ごめんなさい、この映画大好きなんです。

 
 冒頭で、この映画の批評が劇中で行われるという異常事態。ワンカットで製作者や出演者、妻から責められるシーン。主人公がなんとか自身の過去を表現によって克服する様子が印象的。


 しばしば自分の生き方、人生が思い通りにいかないことがある。
とうとう製作は上手くいかず、大きいロケットの発射台のセットだけが残る。製作記者会見で追い詰められる主人公、『自分の人生は描くほどの価値はないのか』、製作は頓挫、自殺の妄想に逃げる。

『何もしないのが一番良い』『作らないのが一番良い』と薦める脚本家。
『でも表現したい』と主人公。
しばしば自分の人生は思い通りにいかないことがある。グチャグチャな人生、その混乱が自分の人生、この映画だ。自分でも何の意味か分からない、作りたいものが分からない。
『人生は祭りだ』ダウナーながら映画を通しての作り手による作り手とその人生の肯定。それでも作り続け、前に進もうとする作り手の背中には普遍的に人生讃歌につながるものがある。
茶一郎

茶一郎