「独立愚連隊」「日本のいちばん長い日」などの岡本喜八監督による戦争映画。沖縄返還を記念して製作された。特撮監督は中野昭慶。キャストは小林桂樹、丹波哲郎、仲代達也などなど。
太平洋戦争末期。本土にある大本営は、本土決戦を避けるために、その付近にある占領国や沖縄などに兵を大量に配置していた。しかし、フィリピンのレイテ島などを重要視し沖縄に配置する兵員を削減してしまった。その後アメリカが沖縄に上陸。兵員も少ない中、県民も招集して編成された部隊による首里攻防戦が繰り広げられた…
ここ最近、沖縄スパイ戦史などを見て、沖縄戦に興味を持ち、岡本喜八にも興味を持っている自分としては結構楽しみにしていた映画でした。
日本版「ハクソ―リッジ」いや…日本版「プライベートライアン」いや…日本版「ブラックホークダウン」いやそれでもない…
そう、これは紛れもなく日本版「炎628」です!!(まだ見てないけど。)
映画開始30分後に繰り広げられる阿鼻叫喚の地獄絵図。次元大介などの小林清志さんのナレーションのもと、淡々と客観的に述べられる当時の戦局の記録のもと、兵隊や一般市民が無惨に爆撃で死んでいく。
一般市民も兵隊に編成され、老若男女関係なく、全ての人間が疑心暗鬼や絶望に駆られ小銃を握り、野戦病院は地獄より悲惨な状況と化し、国の忠義に従いあるものは手榴弾で、あるものは剃刀で、あるものは毒物で、自決していく姿を見るとそれだけで悲惨さが伝わってきます。
終盤に行くにつれて悲惨さは極限なまでに増すが、あくまで情緒的に映すのではなく、淡々と客観的な犠牲者数などのテロップと悲惨な場面だけで描く。このあまりにも乾ききった死の描写がたまらない。うん実にたまらない!流石喜八!アメージング喜八!涙すらでないぜ!むしろあまりの壮絶っぷりに終盤笑っちゃたぜ!HAHAHAHAHA!
特にすごいのが、洞穴に避難した島民を火炎放射器で炙り出すシーン。その後にあまりの惨状に頭が逝っちゃったおばあちゃんが音頭踊って出てきたところに戦車が…なんやこれ!?ふぁ!?えぐいですね~。
やはり喜八はカット割りは世界一!目まぐるしく切られるカットは例え軍法会議であっても飽きさせず、それでいて戦闘シーンなどは短いカットに当時の資料映像も合わせてドキュメンタリータッチにも見える。
それでいて、印象的な台詞回しも特徴的だ。「海が見えない!」「この大根どうしようかしらね…」この皮肉交じりの反戦ムードが漂うのも喜八風。
沖縄県民というより、岡本喜八の戦争に対する怒りが見事に映画から漂う。それでもアナーキーさはなく、あくまで反戦映画に徹した内容である。
しかし当時沖縄県民からの支持はあまり得られなかったという。こんなものじゃない、こんな生ぬるい映画は許容できないという意見が出たそうな…(「岡本喜八の全映画」小林淳著、アルファベータブックス出版、p157、7行目)
こんなものじゃない!?生ぬるい!?
は!?・・・は!?・・・ふぁ!?・・・
是非皆さんもその目で確認してみてください。