牛猫

死刑弁護人の牛猫のレビュー・感想・評価

死刑弁護人(2012年製作の映画)
3.5
死刑事件の裁判を数多く担当してきた弁護士の安田好弘氏の姿を追ったドキュメンタリー。

どんな事件であろうと一貫して死刑廃止を唱え、死刑囚に寄り添おうとする。光市母子殺害事件の弁護団の会見がニュースで度々流れていたことから、この人の事は知っていた。事件の陰惨さもさることながら、物議を醸したドラえもん発言に代表される被告の証言はあまりにも衝撃的だった。
被害者感情を考えると、死刑になって然るべきと思ったし、こんな輩を擁護する弁護士にも嫌悪感しかなかった。

しかし、表面的な事しか報じずに、加害者をただのモンスターとして扱い、生い立ちや背景などは一切無視するメディアのあり方や、加害者や弁護士を一方的に叩く社会の理不尽さ、違和感をこの映画を通して知ることができた。
本当に必要なのは誰かを断罪することではなく、二度と同じことが起こらないようにすること。そのために徹底的に真実を突き詰めていく信念の強さを感じた。
安田弁護士のブレない姿勢は多くの敵も作るだろうけど、いくら国や権力に妨害を受けようとも、社会に非難されようとも、弱者に寄り添おうとする姿には心を動かされた。

普段あまり機会がない死刑制度について考えるきっかけにもなる作品だと思った。
牛猫

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