このレビューはネタバレを含みます
室町時代に人々を魅了した実在の能楽師と、その相棒となった盲目の琵琶法師の友情を描いた話。
圧倒的なスケールの映像美と終盤のライブシーンには目を見張るものがあった。琵琶をはじめとする和楽器とロックの融合は独特だけどかっこいいし、音楽映画が好きな人なら満足できるほどボリューム満点だった。
しかし、ストーリーは平家物語に絡めているものの割と一本調子で主人公2人がみるみる大衆の人気を集めていく様はやや冗長で退屈。
音楽自体もあの時代において物珍しさはあったかもしれないけど、それほど人の心を掴む何かがあったとは思えないし、いかんせん説得力がなかった。
異形の姿で産まれた犬王が相棒と出会い、演舞を通じて自分を取り戻していくプロットは良かったけど、平家物語に馴染みが薄いせいか、いまいち入り込めなかった。
クライマックスの演舞も映像と音楽は良かったけど、やはり2人の関係性や心理描写が薄めでイマイチ感動しきれない。
犬王のキャラデザが不気味さと可愛らしさが感じられる絶妙さでキャッチーなだけに、2人の距離が縮まるエピソードがもっとあれば良かった。
この手の映画は実在の人物をモデルにした伝記映画に軍配が上がるかも。