このレビューはネタバレを含みます
75歳以上の高齢者に自ら死を選ぶ権利を保障・支援する制度「プラン75」の施行された社会で、制度に振り回される人々を描いた話。
試写会にて。
役所の窓口で来庁した高齢者を相手に丁寧に応対する職員。しかし、説明しているのは高齢者に安楽死の権利を与える制度。難しいイメージのある行政手続きの中で、異様なほど簡素化された手続きの簡便さが不気味さを一層際立たせる。爽やかな風貌でホロコーストじみたとんでも政策の説明をする磯村勇斗のギャップが良かった。
なんともシニカルでショッキングな題材だと思ったけど、今の日本の現状を思うと単なるフィクションと割り切って観れなかった。
以前はセンセーショナルでそれこそありえないような話だったと思うけど、少子高齢化に歯止めがかけられず、未来の見通しも立たず絶望している若者が溢れている中で、まるで危機感がなく増税を強いる今の政府だったら、決してありえない話でもないのかもと思ったり。
安楽死を強制するのではなく、広告や同調圧力を巧みに使って思考停止させ、死に追いやっていくやり方がなんとも日本的で面白いような恐ろしいような。
題材が題材なだけに面白いといえる作品ではないけど、淡々とした中に日本のリアルが詰まっていたし、名優たちの静かな演技に心動かされる作品だった。
