みちろう

蒲田行進曲のみちろうのレビュー・感想・評価

蒲田行進曲(1982年製作の映画)
4.5
予想外にこれはすごく面白かった!

売れっ子スターオーラを纏い全てがぶっ飛んでる俳優の銀ちゃんこと銀四郎が付き人のヤスに自分の子供を孕った小夏を押し付けた所から物語が始まり、突然結婚することになったヤスと小夏が家庭を築いていく話とかつての栄光が忘れられつつある銀ちゃんがとある時代劇の映画でカムバックを果たそうとする話が進行する。

とにかく圧倒的な熱血人間ドラマ。
ヤスは銀ちゃんを慕い銀ちゃんのためなら何でもする物凄い献身的な人で、それは銀ちゃんの小夏の面倒を見て欲しいという頼みにも適応されてて一応妻である彼女のためにも文字通り己を犠牲にして生活を支える。奴隷みたいだけどヤスはどんなにコケにされようが銀ちゃんが逆に落ちぶれたりしようが絶対に彼を見捨てないし、小夏のためなら満身創痍になってまで危険なスタントをやってのける。

パワハラや男尊女卑と今では完全アウトな表現ばっかでまともに今の常識で見るとちょっと不快になるけど最終的に自分にはボロボロになりながらも真っ直ぐで己を曲げないヤスの姿から本物の友情、リスペクト、愛が伝わってきた。古い価値観が罷り通ってなきゃ生まれないものではあり支持はできないけど今の映画でこんな輝きを見ることは多分そうそう無い。

ここまで素晴らしく出来てるのは最初から最後まで迫力ある派手な演技と演出の功績がかなり大きいと思う。登場人物は自然でもリアルでもない演劇のような喋り方をするし見どころのシーンでは都合よく雷雨や雪が降る。

いつもなら不自然でツッコみたくなる減点要素の一つのはずなのにこの映画ではそれらをこれは映画だから!と割り切って大いに心理描写やシナリオの展開などの全てを盛り上げる。リアルかそうじゃないかの意識はいつの間にか消えてもう映画に夢中だった。ここで演出も音楽も控えめで台詞も自然なやりとりを見ても面白いかもしれんが同じような感覚は得られなかったはず。

最後のクランクアップで締めくくり映画から現実に戻されるエンディングがまさに今までのはあくまでフィクションですよと言ってるようで、改めて一つの作品として映画を観る感覚を意識させられた。あくまで映画。リアルじゃなくてもいい。そんな解釈。

耳に残るテーマ曲(蒲田行進曲, 恋人も濡れる街角)、意外と凝ってる映像美、ぶっ飛んだ演出、改めて普通にクオリティ高い/ヤスの生命力高すぎ/コレがコレなもんで/松竹/長すぎた階段/階段で結婚式/みんな声でかすぎ/銀四郎ここに眠る
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