ハル奮闘篇

ガメラ3 邪神<イリス>覚醒のハル奮闘篇のレビュー・感想・評価

4.3
【 完結篇に力が入り過ぎたのか、物語にはノレず。でも特撮シーンはお見事! そして迎えるエンディングは… 】

さすらい農場さんとの「漢(おとこ)の鑑賞会」。テーマに沿った映画を2夜連続で合同でレビューしています。
第4回のお題は「平成ガメラ(後編)」。“4回表”は「ガメラ3 邪神<イリス>覚醒 」です。


【 テーマは「ガメラは凶悪怪獣との市街戦で 犠牲者を出しても許されるのか !?」 】

 平成ガメラ三部作の最終章となったこの第3作は、前の2本よりもグッと“シリアスなムード”になっていました。前の2本にはコメディ的な要素、ツッコミを受け入れる大らかさ、懐の深さをもっていたんですが、第3作にはそれがない。ヘンな言い方ですが「映画が切羽詰まっている」印象を受けたんです。

 結論から言うと、残念ながら、ストーリーの面では、僕はまったくノレませんでした。

 「主人公の中学生・綾奈(前田愛)は第1作のガメラVSギャオス戦のさなか、ビルが崩れて両親を亡くし、以来、ガメラを憎んでいる」という設定。
 どうやら、この第3作のテーマは「凶悪な怪獣を倒してくれるガメラであっても、街中で戦って一般市民を犠牲にしたら、それは許されるのか」「そもそもガメラは人間の味方なのか」ということらしいんですが。

 このテーマに「 んっ!?」って思ってしまったのです。 


【 作り手のメッセージが何なのか、さっぱり見えてこなかったのだ 】

 そりゃあ、小さい頃から怪獣映画やウルトラマンで市街戦を観るたびに「わ~!めっちゃビル壊してるじゃん!」って笑ったり、スカッとしたりはしてきたけど。でも、その点について、キャッチコピーに「わたしはガメラを許さない。」とまで謳い、大上段に構えてテーマとして“真顔で問われる”ことに、違和感をおぼえました。

 「所詮、怪獣映画じゃん」なんて言うつもりはないんです。
 でも、じゃあ、本作のガメラはそもそも何のメタファー(隠喩)なんだろう?「ガメラは人間の味方か」というテーマを通じて、製作陣は、現代社会の何を観客に伝えたかったんだろう?

 作り手のメッセージが、僕にはさっぱり見えてこなかったのです。終盤までは。


【 水野美紀も言ってたぞ「ガメラは地球の守護神なのよ」】

 思えば、第2作「レギオン襲来」のラストで、ヒロイン水野美紀はこう言って微笑んだのでした。「ガメラが救ったのは人間じゃなくて、この星の生態系なんじゃないかなあ」「きっとガメラは地球の守護者なのよ。(人間が生態系の破壊を続けることで)ガメラの敵にはなりたくないよね」と。(ステキだったなあ、水野美紀!)

 第2作で「ガメラは地球の守護者であって、人間の味方なわけではない」と結論づけておいて、第3作で「ガメラは人間の味方なのか?」って問うのは、どうなんだろう?

 ストーリーは何やら複雑です。
 主人公の少女・綾菜がガメラを憎むあまり「イリス」の体内に中に取り込まれて一体化したり、エキセントリックな巫女・山咲千里と、それに輪をかけてエキセントリックな手塚とおるが登場して「人類は怪獣によって滅亡されたほうがいいんだ」みたいなことをブツブツ口走ります。
 でも“ちょっと何言ってるかわかんない”。ハンバーガーセット プリーズ、ヘルプミー!

 「製作陣は力が入り過ぎて、ここまで迷走しちゃったのかなあ」と思ったのです。


【 今回も大迫力のアナログな特撮! 絵はがき向き! 】

 と、さんざんケチをつけてしまいましたが、最初に言ったとおり「ストーリーの面では」ノレなかったのであって。今回も、怪獣同士のバトルシーンの特撮には大満足です!

 冒頭、ガメラが渋谷駅付近に墜落するシーンからして大迫力!

 でもなんといっても、夜の京都での大決戦!京都駅付近で対峙するガメラとイリス。右手に東寺の五重塔がそびえる。左に見えるのは東福寺なんでしょうか。夜の闇の中、平野のその一帯だけがオレンジの火の海に包まれる。火の粉が舞い上がっている。
 このカットのビジュアルは文句なしにカッコいい!絵はがきにして土産物屋さんにおけば、修学旅行生の男子は記念にこぞって買っていくのではないか。(僕なら買います!)
 
 そして、京都駅“構内”での最終バトル。僕自身、記憶にある限り、京都駅で下車したことは一度しかないけど(バイクでは数回行きました)そう言えば、駅舎の天井がすごく高かった気がするなぁ。その構内でガメラVSイリスの接近戦。すぐ下で主人公たちがその様子を見守っている。仰角のカメラアングル。至近距離から見上げる大迫力の画。屋根のある“屋内”で大怪獣たちが顔を突き合わせる。これはすごいシーンでした。


以下、ラストシーンに言及します。
↓ ↓ ↓










【 クライマックスでは結局、シンプルに「私たちはガメラを信じる」と。最初からそれでいいじゃん! 】

 クライマックスの京都駅のシーン。中山忍、前田愛、藤谷文子、山咲千里。 監督・金子修介の好みらしき(笑)美女・美少女を集結させます。
 なんやかんやで、綾奈のガメラに対する憎しみのわだかまりも解けていきます。
 一方、当のガメラは、イリスとの死闘を制したものの、片腕を失くしてしまう。

 と、まさにそのとき!
 世界各国から日本政府に「おびただしい数のギャオスが日本に向かって飛来している」との情報が入ります。満を持して登場する大物俳優・津川雅彦が「現時点をもって攻撃の標的をガメラからギャオスに変更。陸海空、全自衛隊の総力をもってこれに対処せよ!」。

 手負いのガメラは地上で身構え、ギャオス襲来に備える。しかし満身創痍。
 「ガメラは最後まで戦うつもりです。たとえ一人になっても」。
 「ガメラは一人じゃないわ。(私たちがいる)」。
 そしてガメラを憎んでいたはずの少女・綾奈も最後にひとこと、「ガメラ…」とつぶやく。

 最初からそれでいいんじゃん! 手塚とおるがヘンなこと言うくだり、いらないじゃん!(失礼)
 いや。でもさ、最後まで観てきてやっとわかったよ。笑いを封印したのも、無理矢理に難解なエピソードを押し込んだのも、すべてはこのラストシーンのためだったんだな。


【 最期のガメラの姿は、気高く美しく 】

 万にひとつの勝ち目もないだろう。
 無数のギャオス飛来を前に、死を覚悟するガメラ。
 気高き咆哮が夜空に響く。その姿は美しい。
 暗転。静かにしのびこむエンドロール。

 あぁ、三部作の最後にこれがやりたかったんだね。
 きっと、配給収入のかねあいで、第4作の製作は難しいことがわかっていたんだろう。
 これが最後だと悟っていたんだろう。

 だから、ガメラの雄姿をファンの目に焼き付けたかったんだね。
 そして、ガメラを永遠のものにしたかったんだね。
 オレだってこうやって三本を観てきたんだ。少しはわかるつもりだよ。
 作り手のメッセージは、ガメラへの愛、そのものにありました。

 なんだかんだ言って、観終えてみれば「好きな映画」の1本になっていたのでした!

 エンドロールで流れる女性ボーカルの柔らかい歌声。

「♪もういちど出来るなら ここに戻ってあの姿を  力が尽きても 倒れそうでも 届かなくても また走り出す  見ていてね そして教えてほしい 限りない勇気を」(作詞:金子修介)